【題名】
銀行が母の遺産を兄に独り占めさせている件
【ご質問内容】
関東の銀行での事です。兄が私に内緒で私名義で銀行口座を開設。その口座に相続のお金をいれているようです。その口座はM銀行が3口座S地方銀行が2口座。S銀行は特にひどく、この前訪問してもないとのこと。M銀行も、私の名義なのに、兄の財物なので見せられないといいます。兄はM銀行員です。警察に行っても「被害者は銀行であなたではない」の回答。この情報がもれて怪しい人にも家宅侵入の被害があります。S銀行の一つは開示してくれ、印刷して持っています。私はどういう行動をとればいいのでしょうか。民法上の不法行為の消滅時効の行為から19年しています。父が19年母は9年経過してます。裁判はこれからの予定です。
【ニックネーム】
まさかの横浜
【回答】
1 なぜ、兄は相談者名義の口座を作ったのか?
今回の質問では、兄が相談者名義の口座を開設していると記載されていますが、なぜそのようなことをするのかを考える必要があります。
考えられるのは次の2点です。
①相談者名義の口座開設が被相続人の死亡前の場合
被相続人が《兄と相談者に金銭を生前贈与する》という意向があったので、兄は相談者名義の口座を作り、被相続人に贈与する金銭をそこに送金させた。
②相談者名義の口座開設が被相続人の死亡後の場合
被相続人が死亡した場合、遺言書の内容を実現し、あるいは遺産分割協議をして遺産を分割する必要があります。
その場合、遺言書に相談者に金銭を支払うという趣旨の記載があった。
あるいは、遺産分割協議で相談者に金銭を支払うという内容で合意した。
そのため、兄は相談者名義の口座を作り、相談者が受け取る金銭をその相談者口座に送金した。
2.銀行の照会について
上記1項に記載したうち、どちらのケースなのかをはっきりさせる必要があります。
そのためには、相談者名義口座の開設時期まで遡って取引履歴(預金口座の入出金状況)を取寄せする必要があるでしょう。
銀行から取引履歴明細が届けば、兄がいつ口座を作ったのか、そこにどれだけの金銭が入金されたのか、送金されたのであれば誰が送金したのか等、今回の問題を解決するために必要な事実関係が把握できるでしょう。
ただ、質問から見ると、M銀行は照会に応じないようです。
他人名義で作った口座が、果たして作成者である兄のものか、あるいは相談者のものであるかについては、法律的に見て色々な見解がありえます。
そのため、できれば早期の段階で弁護士に相談され、今後の対処法、特に銀行との交渉などは弁護士に依頼されるといいでしょう。
なお、弁護士として考えられる方策として、次の点を考慮されるといいでしょう。
①弁護士からM銀行に照会の回答をするように交渉をしてもらう。
②もし、M銀行が回答しないようなら、弁護士から銀行宛に内容証明郵便などを送付してもらい、M銀行相手の紛争にしてしまう。
このような紛争を発生させた場合、M銀行は、紛争を回避し、あるいは拡大しないために、その社員である兄に解決を促すという動きをする可能性もあることも覚えておかれるといいでしょう。
特に本件のような場合、M銀行員である兄が相談者の名前を使って口座を作ったことについては、銀行としても看過できない(ということは兄に善処せよと迫る)問題であることも付け加えておきましょう。
③相談者名義の預金は凍結するように、弁護士からM銀行を含む金融機関に通知を出すことが必要です。
本件では、以上のような方策なども、相談される弁護士と協議されるといいでしょう。
弁護士 大澤 龍司