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実例Q&A

兄が認知症の母の財産の抱え込みをしている【Q&A №691】

2020年9月7日

【質問の要旨】

・一人暮らしの母が認知症になり、長女がしばらく週1で介護に通う

・兄が長女に相談なく実家を売却し、母も施設へ

・兄は、母の預貯金と家の売却のお金を全て預り、収支報告を求めても無視

・長女にできることは何か?

 

 

 

 

 

【回答の要旨】

・実家を勝手に売却されたとしても兄に損害賠償請求できるのは母だけである

・母の相続発生後はあなたが法定相続分の限度で兄に損害賠償請求等できる可能性がある

・母の成年後見審判の申立ては娘であるあなたでも可能である

【ご質問内容】

お世話になります。

 

私は長女で、兄がおります。

今年の初めに、母が認知症になり要介護認定を受けました。

 

当時は、母は一人暮らしをしており私が介護のために週に何回か通っておりました。

当初から兄が、実家を早く売るように執拗に私に連絡をして来ておりました。

 

春ごろに兄が、母の面倒を見たいので自分の家に引き取るということで兄夫婦でしばらく面倒を見ていました。

その内実家を売るから出てこいということで、呼び出され、私がまだ売らなくてもと言うと「お前には権利がない!」と暴言を吐かれました。

知らないうちに実家が売れており、(後見人はなし)私には何の報告もありませんでした。

また、知らないうちに母を施設に入れておりそれも私には報告がありませんでした。

 

兄は母の預貯金と、家の売却のお金を全て預かっており不透明にせず収支報告をするように言っても無視されております。

「何で、あんたに見せなくてはいけない?」と言われました。

後見人をつけたいですが、強欲な兄が承知するとは思えません。

今は、喧嘩腰にものを言ってくる兄とは話し合いはできない状態です。

 

私にできることを、ご教授お願いいたします。

 (青空)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

【実家を勝手に売却されたとしても兄に損害賠償請求できるのは母だけである】

母が認知症で、兄が実家を勝手に売買したとありますが、母の認知症の程度はどの程度だったのでしょうか。

重度の認知症で判断能力がない場合は、仮に母が売買契約書に署名捺印してもその契約は効力がなく、また、母が兄に売買の代理権を与えたとしても、その委任契約自体も効力がなく、結局、実家の売買は無効です。

もし、兄が無断で実家を勝手に売買し、母に損害を与えたのであれば、母は兄に対して損害賠償を請求できます。

 

【母の相続発生後はあなたが法定相続分の限度で兄に損害賠償請求等できる可能性がある】

ただ、この損害賠償請求ができるのは、母が生存している限りは母だけです。

将来相続人になるあなたであっても、母の権利は行使できません。

ただ、母が将来亡くなって相続が発生した場合は、あなたは法定相続分の限度で母の請求権を相続します。

そのため、兄が実家を売却したお金を自分のものにしていた場合は、相続開始後に兄に取り込んだ金銭の損害賠償請求等をするといいでしょう。

 

【母の成年後見申立ては娘のあなたでも可能である】

母が、兄にお金を使い込まれているような場合には、そのような使い込みを防ぐために、成年後見審判の申立てをして、母の財産を成年後見人に管理してもらうといった対応策が考えられます。

成年後見審判の申立ては、民法上、本人、配偶者、4親等内の親族などが行うことができます。

娘であるあなたは、1親等の親族になりますので、母の成年後見審判の申立てをすることが可能です。

ただし、成年後見審判を得るためには、母の判断能力を欠くことを証明する裏付資料(長谷川式認知スケール等の検査書類)が必要です。

もし、兄や母の入居している施設の協力が得られず、この資料を入手できない場合、成年後見審判の申立てができません。

高齢者虐待防止法では、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者に対し、市町村への通報努力義務が規定されています。

本人の自宅等を本人に無断で売却する行為は、高齢者の経済的虐待に該当する可能性があります。

そのため、近くの市町村役場や地域包括支援センターなどに相談し、その協力を求め、市町村などの行政申立で成年後見も申し立てをするか、あるいはその協力を得て後見申立てに必要な前記資料をとることも考えられるといいでしょう。

(弁護士 石尾理恵)

 

 

 

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