【質問の要旨】
遺言書があるのに、株主名簿変更手続きに応じてもらえない
【ご質問内容】
非上場株式,譲渡制限株式を親が死んで相続したのですが、姉が勝手に会社に電話して、相続人兄弟3人で話し合うといったので、会社は3人相続人全員の話し合いをしてください、と言いました。
ところが、その後、遺言書があって、私1人に全部相続させる、という遺言でした(家裁検認済み、遺言執行者も私)。
それで、それを会社に言ったら、それでも、「3人相続人全員の話し合いをしてください、」というばかりで何回請求しても相続手続き(株主名義変更手続き)の用紙も送ってこずに、完全に無視した状態です。
相続手続き(株主名義変更手続き)に応じようとしない会社に対して、遺言執行者として法的にどのように対応すべきでしょうか?
【遺言書があれば、株主名義変更手続はできます】
遺言書が、あなたにすべて相続させるという内容になっていた場合、原則としてすべての遺産はあなたが相続し、遺産の中にある株式もあなた一人が相続します。
そのため、あなたが会社に株主名義変更手続をした場合、会社としてはこれを拒む理由はありません。
ただ、他の相続人が遺留分減殺請求をした場合、あなたとその遺留分減殺した人が株主になります(法律的には、株式がそれらの人の間で準共有になります)ので、会社としては遺留分権利者の同意も得てくれということで名義書き換えを拒むことができます。
遺産である株式について、複数の相続人がいる場合には、その全員の同意がない限り、名義変更もできず、又、株主として株主総会にも出席できないというのが裁判所の裁判例です。
【会社としてはトラブルに巻き込まれるのを避けようとしている可能性があります】
遺言書があり、検認も終わっているようですので、遺言執行者のあなたとしては、株主名義変更に必要と思われる書類(遺言書、被相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、遺言執行者の印鑑証明書など)を会社に送り、遺言書どおりの株主名義変更を求めるしかないでしょう。
会社の立場から言えば、お姉さんが「相続人兄弟3人で話し合う」との連絡をしてきたために、法定相続人間で合意をしてもらってから、名義変更をしたいと考えている可能性が高いです。
(参考までに言えば、上場株式については、証券会社、信託銀行その他銀行などの金融商品取引業者等が管理をしており、名義書き換え手続を行ってくれますが、その場合であっても、証券会社所定の「相続人全員の同意書」を求められることが多いようです。)
もし、遺留分減殺請求がなされていないのに会社が名義書き換えに応じない場合には、その旨を説明して会社を説得するしかないでしょう。
それでも、会社が応じてくれなければ訴訟を提起するしかありませんが、訴訟をする前に、念のために弁護士に相談されることをお勧めします。