【質問の要旨】
遺言による登記を放置した父の家
【ご質問内容】
20年前に父が亡くなり、現金は母と3人の子供で分けましたが、母の住む家土地は父名義のままです。
10年程前母がこの土地と家(1600万程)を可愛がっている地元に居る私の二男に相続させると遺言状を書いて私に渡されました。
私は母2分の1、子供が残り2分の1を3人で分けて6分の1ずつになる。と思っており、母が亡くなった場合、他の2人の兄弟には6分の1ずつの代金を支払えば済むかと思っておりました。
しかし、母が亡くなった場合、相続の手続き放置したままの父の土地家は母を飛び越えて3人で3分の1ずつで相続する事になると聴きました。
そうなら、母が私の二男にこの土地、家を相続させると書いた遺言状は意味が無いのでしょうか?
折角、母が可愛い孫に書いてくれた遺言状ですが、私が勝手に放棄すると罪になる様ですし、開示するには他の相続人も集めて家庭裁判所で開封と聞き、他の兄弟は不満に思うでしょうから、面倒な事になったなと思っております。
母が亡くなった場合、この遺言状に書かれている事は有効でしょうか?無効でしょうか?
追記
母は5年程前より認知症になり、今は相談出来る状態では有りません。
5年前より、ホームへ入り、家は空き家になっております。 よろしくお願い申し上げます。
※敬称略とさせていただきます
【父の名義の不動産の所有関係】
父は20年前に亡くなっていますが、その遺産分割がされていません。
そのため、父名義の不動産は
母・・・2分の1
3人の兄弟・・・それぞれ6分の1
で所有(共有)していることになります。
登記が変更されていなくとも、相続が発生した段階で当然に上記のような相続分に応じて、所有権が移転されていることになります。
【相続登記していなかった不動産はどうなるか】
父の死亡後、相続登記がされていなくとも、相続が発生した段階で当然に上記のような相続分に応じて、所有権が移転されていることになります。
そのため、母が亡くなったときには、母の持つ共有持ち分は(遺言書がなければ)母の相続人である子3人に3分の1ずつ相続されます。
(正確にいうと、母の持ち分が2分の1ですので、子3人は母からは不動産のそれぞれ6分の1ずつ相続することになります。)
【遺言書がある場合の母の死亡時の所有権】
母が、孫(あなたの二男)に不動産を相続させるという遺言書を書いたということですが、母は不動産について2分の1の割合の持分権しか有していません。
つまり、不動産全部を持っていません。
そのため、遺言書は母が現在、持っている2分の1の共有持ち分の限度で有効になります。
もし、母の相続が開始した段階では、不動産の所有関係は
3人の兄弟・・・それぞれ6分の1
孫(あなたの二男)・・・2分の1
ということになります。
【遺留分減殺請求も考えられる】
母の相続人はあなたを含めて子3人です。
あなた以外の他の子は、母の遺産につき6分の1の遺留分権を有していることになります。
減殺請求後の不動産の所有関係は次のとおりとなります。
あなた・・・父からの相続6分の1(遺留分を行使しない前提です)
他の2人の兄弟・・・父からの相続分それぞれ6分の1+母の遺留分減殺相当分12分の1(=6分の1×2分の1)
孫(あなたの二男)・・・12分の4
【まとめると次の結論になる】
遺言書は有効ですが、もともと母は2分の1の持ち分しかなかったので、孫分しか孫(あなたの二男)に行きませんし、その分も他の2人の母の子が遺留分減殺すると、その分、持ち分が減るということになります。
なお、平成30年相続法改正によって遺留分に関する規定が改正されました。
改正後は、遺留分侵害額請求権を行使しても、その共有持分の割合には何ら影響がありません。
この点はご注意下さい。