先日父が他界。
父には子供がABCD(母は他界)と4人。
10年前に「Bにすべてやる」という公正証書をBが作成。20年前にAと父で遺留分等を検討した公正証書がありましたがそれは無効という記述までありました。
Bは父を取込、数年前から施設に預け(父の家賃収入で賄える範囲=Bは金銭的・体力的に世話はしていない)、「Aを信用するな!」等と言う張り紙を部屋に貼っていました。
今回父が他界し、Dが「亡き母が自分名義の通帳があると言っていた」と思い出し、銀行に口座の確認をした所、昨年、全額預金引き出しされていました。
また、父の家の玄関の鍵を勝手に交換し、Aだけが番号を知っており鍵も持っていた金庫をガスバーナーでこじ開けています。
これらの行為は「全てBに」という公正証書があればやっても良いのでしょうか?何か法的に訴えることは可能ですか?
というのは、寄与分(父の投機失敗により多額の借金を清算するためA名義の土地を売った)の証明がその金庫に入っていたはずなのですが、Bがこじ開けているため、証明不可能になってしまい、Aが40年以上住んでいる土地をBが相続すると言っているのです。
困り果てています。
ちなみにAは生活に困窮・Bはかなり裕福です。
「10年前に『Bにすべてやる』という公正証書をBが作成。」とありますが、これは父の公正証書遺言のことだと思いますので、その前提で回答します。
【母の預貯金ついて】
《誰の財産か?》
まず、母が作成したD名義の預金通帳があったようですが、もし、母が自分の財産で蓄えていたのなら、その預金はDのものではなく、母のものです。
《生前に引き出されたのか?それとも死後か?》
母の財産である場合には、母の生前に引き出されたものか、それとも死後に引き出されたものかが問題となります。
《生前の引出なら》
預金が母に生前に引き出されたものであれば、その引出を誰がしたのか、母がしたのならその引き出した金はどこに行ったのか?
もし、母の意志で特定の人に渡したのであれば特別受益の問題がでてきます。
《死後の引出なら》
おそらく質問では、死後の引出を問題としているのでしょう。
この場合には、母の遺言書がないなら、各相続人が法定相続分に応じて取得しますので、仮にBが勝手に引き出したというのなら、他の相続人はBに対し、それぞれの相続分に該当する金額の返還を要求できます。
【2通の遺言書がある場合】
2通の遺言書がある場合、後に作成された分が有効になります。
なお、父は遺言作成するときに、Bからいろいろ言われていた可能性が高いでしょうが、最終的に父が自分の意思で、『Bにすべてやる』と決めたのであれば、遺言は有効です。
また、Bが金庫などを壊したということですが、自分が取得した財産の処分は自由ですので、その点についていえばBに違法な点はありません。
【遺贈は寄与分に優先する】
遺言(遺贈)は寄与分に優先します。
遺言で『Bにすべてやる』というのが有効であれば、寄与分の問題は発生せず、遺産はすべてBさんに行きます。
【寄与分か貸付か?】
ただ、Aがした行為が贈与《寄与分》ではなく、《貸付》であった場合には、Aは父に対して返還請求ができます。
本件では父が死亡していますが、その遺産を取得したBに対して、その貸金債権を請求することができます。
【遺留分減殺請求ができる】
Bが遺言書で父のすべての遺産を取得する場合には、他の相続人は8分の1の限度で遺留分減殺請求ができます。
但し、その請求できる期間は、原則として父が亡くなられてから1年間ですので、早期に弁護士と相談し、しかるべき手を打つべきでしょう。