【質問の要旨】
被相続人:夫(6/30他界、約17年間重婚的内縁関係にあった)
経緯
①夫が死亡した直後、本妻より夫の弟経由で預金通帳と車の引き渡し要求があった。
②葬儀を終え、死亡2週間後に預金通帳と車を渡した。
③病院より医療費37万円の請求があり、相談者が立替えて支払い、本妻に請求した。
④夫の弟からは、本妻が37万円を支払うと聞いているが、未だに支払いがない。
本妻に対して訴訟を申し立ててもいいか。
【質問内容】
はじめまして。
よろしくお願いいたします。
約17年重婚的内縁関係にあった夫が6月30日に亡くなりました。
その直後、本妻から夫の弟経由で、預金通帳と車の引き渡し要求がありました。
葬儀から終わり、死亡から約2週間後に、預金通帳と車を渡しました。
病院から、医療費37万円の請求書が届いたので、本妻に支払ってほしいところでしたが、連絡先を直接知らないため、私が支払い、立替金請求書を作成し、領収書コピーと共にお渡ししました。
弟からは、本妻は私に支払うと言っていたと聞きましたが、いまだに支払いがありません。
これまで、再三催促はしたのですが、支払いの意思はないのではないかと思っています。
そろそろ亡くなって3ヶ月が経ちます。
裁判所に訴訟の申立てをしてもかまわないでしょうか。
《ニックネーム》
ちい
【回答】
1.重婚的内縁の妻は相続人ではない
被相続人の配偶者は第一順位の相続人になります。
ただ、この場合の配偶者とは戸籍に入っている配偶者のことです。
相談者の方は、重婚婚的内縁関係ですので、相続権はありません。
被相続人に子がいれば、その子も相続人になります。
2.本妻に医療費の立替金×相続分の支払を求めて提訴できる
相続人は、プラスの遺産だけでなく、マイナスの遺産(借金等‥相続債務)も相続します。
被相続人が死亡したときに、病院の治療費等が未払いである場合、それは相続債務として、相続人がそれぞれの法定相続分に応じて支払い義務を負います。
今回、相続人ではない相談者が支払いをしましたので、本来の債務を負担する戸籍上の妻など、本来の相続人に対して、返還請求をすることができます。
もし、請求しても支払いをしない場合には当然、訴訟をすることも可能です。
3.請求相手は各相続人です。
仮に相続人として妻の他に、子がいれば、妻に2分の1、子に2分の1の請求ができます。
又、子がない場合には、妻が3/4、兄弟全員合計で1/4を請求できることになります。
4.注意すべきことについて
1)重婚的内縁関係の場合、立替金の返還請求を受けた妻の側としては、重婚的内縁関係で婚姻関係が損なわれたとして、相談者に対して慰謝料請求という反撃をしてくることがあります。
そのため、訴訟提起に際しては、この点も注意し、どのような場合に請求されるかを確認しておくといいでしょう。
2)金額が少額ですので、訴訟をする場合、簡易裁判所で裁判されることになります。
裁判をせず、簡単に強制執行ができる手続きとして、督促手続があります。
ただ、相手方が異議を申し立てれば訴訟に移行せざるをえません。
本件では相手方から異議が出そうなケースのようですので、最初から訴訟というのがいいでしょう。
(弁護士 武田和也)
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