相続人のいない従兄弟の葬儀を執り行いました。
従兄弟の財産は、国に没収されてしまいました。
葬儀代だけは戻りましたが、香典分を差し引かれてしまいました。
その後の法要などで、出費がかさみ納得できません。
【ご質問内容詳細】
身内が一人もいない従兄弟が急になくなり財産が国に没収されることになりましたが葬儀代だけは戻りました。
しかしその時に頂いた100万円近い香典を申告したところその分を全部差し引かれてしまいました。
この差し引かれた分の香典代はそのまま国に持って行かれることは理解できません。
その後永代供養や墓の撤去費用や三回忌など費用がマイナス100万近くかかりました。
裁判所の葬儀時の拠出金等清算完了してもう半年以上たちましたが取り戻せることはできますか。
【葬儀費用は相続債務ではないが・・】
葬儀費用は相続債務ではありませんので遺産からの支払いはできないというのが原則です(なお、相続税の申告では葬儀費用は費用と控除対象として扱われますが、それは税務の扱いであり、民法上は遺産にかかわる債務とはされておりません)。
この理由は、遺産から支払われるべき債務は生前に発生したものに限られるのに、葬儀費用は死後に発生するものだからです。
そのため葬儀費用は原則として喪主が負担することになります。
ただ、葬儀は①社会生活上で死亡に伴うものであること及び②その額がそこそこ高額であることから、喪主以外の他の相続人も葬儀に参加していたような場合には、公平の観点から法定相続人に負担させることも実務上、よく行われています。
そのため、財産管理人(国)としては、本来は遺産から支出するべきものではないけれども、葬儀費用程度は支出しても差支えないと判断し、あなたに支払いをしたのだと思います。
【香典の扱い】
葬儀費用は本来、相続債務ではないのですが、公平の観点から遺産からの支出を認めたとすれば、同じく公平の観点から言えば、収入である香典は遺産に入れるべきだという見解になります。
本来的には喪主が負担すべきとされる葬儀に関する支出である葬儀費用は相続財産から出してもらうが、喪主が受け取る葬儀に関する収入である香典は返さなくて良いというのはやはり公平に反するという結論になりますので、財産管理人があなたから香典分を回収したのはやむをえない処置だったというべきでしょう。
次の図のような考え方です。
葬儀費用 ⇒ 本来喪主負担 ⇒ しかし、財産管理人が支出
香 典 ⇒ 本来喪主の物 ⇒ しかし、財産管理人の収入
元々、葬儀費用も当然遺産から出すべきものではなかったのだという前提にたてば、香典で回収を図るという財産管理人の判断もやむを得ないものと思われます。
経済的あるいは金銭的には損をするような場合もありますが、葬儀に関連する事項は単に経済的に考えるのではなく、社会生活の上でやむを得ずする点もあります。
【法事費用の扱い】
死亡直後の葬儀費用も原則は相続費用ではありませんので、その後の初七日や四十九日、一回忌等の法事費用についてはなおさら相続費用には当たらず、遺産から支出することは認められません。
法事費用については、祭祀の承継者が負担するということになります。
相続人ではないあなたが法事を行うのであれば、その点は予め承知されておくといいでしょう。