【限定承認手続きとは】
「亡くなった方(被相続人)の財産を受け継ぎたいけれども、借金がいくらあるのかわからないので、迷っている。」
このような相続人の迷いを解消するために、民法では、「限定承認」という制度を設けています。
この「限定承認」は、簡単にいうと、被相続人の不動産、預貯金などプラスの財産の価額の限度でのみ、借金などマイナスの財産を引き継ぐという制度です。
例えば、相続する資産が1億円(不動産、預貯金等)あるが、借金がいくらか判明しない場合、1億円の限度でのみ借金を受け継ぐということができるのです。
限定承認をしておけば、後から借金が4億円だとわかっても、1億円の限度でのみ責任を負えばよいので、相続によって相続人が、自腹で債務を支払わなければならなくなるというような事態にならなくて済むのです。
【限定承認の手続き】
しかし、一見便利に思えるこの限定承認は、実際にはあまり活用されていません。
というのも、限定承認には、以下のようなデメリットがあるのです。
① 相続人が複数いる場合、全員揃って限定承認する必要があること
まず、相続人のうち1人だけでも行える相続放棄などと違って、限定承認は、相続人全員で行う必要があります。
つまり、相続人のうち一人でも反対する人がいた場合は、限定承認を行うことができません。
② 譲渡所得税を支払う必要があること
二点目として、限定承認をすると、被相続人から相続人に財産が時価で譲渡したとみなされるため、譲渡所得税を支払わなければならなくなるというデメリットがあります。
これは、限定承認を行う際に最も大きなデメリットとなるものです。
また、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に、準確定申告を行う必要があり、この点でも面倒な手続きが必要になります。
③ 債務清算手続きが大変であること
最後に、限定承認の場合、裁判所の手続きで債務を清算する必要があります。
裁判所に申請書を提出するなど、決められた手続きを取る必要があるため、この点でも手続きが煩雑になります。
以上のようなデメリットがあることから、限定承認をうまく活用できるケースは非常に限られ、実際にこの手続きが利用されることはほぼないといえます。