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実例Q&A

相続法改正4 遺産分割前の預金払い戻し制度ができました

2019年8月9日

【遺産分割前にも預金の払い戻しが可能に!】

預金口座の名義人が死亡されると、預金が動かせなくなることはみなさんご存じの方も多いと思います。

たとえばお父さんがお亡くなりになると、銀行は口座を凍結し、お父さんの口座のお金が引き出せなくなるため、葬儀費用やこれまで支払っていた光熱費・家賃の支払いなど各種の支払いに困るというケースが多く出ていました。

銀行が口座を凍結するのは、各相続人が別々に「私に預金を渡せ」と言ってこられると誰に預金を渡してよいかわからず対応に困るからですが、この銀行実務を承認するような最高裁判決が平成28年に出されました。

【預金も遺産分割の対象とする最高裁判決】

最高裁判所は、平成28年12月19日判決により、共同相続人の一人が単独で払い戻しをすることはできないことを認めました。

要するに、上記の銀行の実務運用を法的にも正しいことだと認めたわけですが、このことで、葬儀費用や光熱費の支払いなど死亡後すぐに支払を要するものにどう対応するかが議論されることになりました。

その結果、今回の預貯金払戻制度ができました。

【一定額なら遺産分割しなくとも払い戻しができます】

今回できた新制度は、預貯金債権の一定割合(銀行1つについて150万円が上限)は、遺産分割ができる前にも払い戻しの請求が可能とするものです。

具体的な計算で払い戻しができる額を見てみましょう。

具体例)
 銀行に父の預金口座が1つあり、死亡時の残高は600万円
 父の相続人は長男と長女の2人だけ
 → 長男が払い戻しを請求した場合の処理は次の通り
(計算式)
 預貯金債権の額(600万円)×1/3×長男の相続分(1/2)
=100万円を限度として払い戻すことが可能

なお、このケースでは計算式で算出した金額を全額引き出すことができますが、上限額(150万円)を超える場合があることには注意しましょう。

【制度は2019年4月1日から施行されています】

遺産分割前の預貯金払い戻し制度は、2019年(平成31年)4月1日から施行されています。
この制度は、施行日前に開始した相続についても適用されますので、必要があれば新法の施行前に死亡があった相続でも払い戻しを求めることができます。
ぜひご活用ください。

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