遺産分割前の遺産不動産の賃料収入は、遺産分割によらず、当然に法定相続分に応じて取得される
最高裁平成17年9月8日(平成16年(受)第1222号)
【ケース】
被相続人は多数の不動産を所有しており、その相続人は、後妻と前妻の子らであった。
相続人間では、これより前に遺産分割審判がなされ、収益不動産について、後妻が取得した。
ただ、遺産分割審判が確定するまでの賃料収入が約2億円あったことから、その分配方法が相続人間で争いになった。
第1審及び第2審は、後妻の主張する、遺産分割審判に沿った内容での計算(当該賃貸不動産を遺産分割で相続した後妻が相続開始後の賃料を全部取得する)が妥当だと判断したが、前妻の子らは、法定相続分に従って分割するべきだと主張して争った。
【裁判所の判断の概略】
上記の事案において、最高裁判所は、
① 共同相続財産である賃貸不動産から生ずる賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する
② 遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない
と判断した。
つまり、遺産分割で特定の者が相続することが決まっても、決まるまでの間の賃料については、法定相続人全員が、法定相続分に応じて取得することができ、遺産分割によってその不動産を取得した者が、全賃料を取得するのではない、と判断したということである。
【弁護士のコメント】
この判決は出る前は、1審・2審がとったような考え方、つまり、遺産分割の効力が相続開始の時にさかのぼる以上、遺産不動産から生じた賃料債権も、相続開始の時にさかのぼって、遺産分割でその不動産を取得した者に帰属するのだという考え方と、この判決のように、法定相続分で分割するという考え方とで分かれていて、判断の統一が求められていました。
そんな中、この判決により、遺産不動産の賃料については、被相続人の死後、遺産分割でその不動産の所有者が決まるまでの間は、法定相続分で分割するということが明らかになり、現在の実務はこれに従って進められています。