【質問の要旨】
【ご質問内容】
相続放棄について相談があります。
負の遺産の方が多く、相続に関して、父からは亡くなったら相続放棄をしろ。と兄妹全員に通達がありました。全員相続放棄する意思があり、3ヶ月以内に相続放棄するとのことですが、その間に相続放棄できなくなる事項があれば知りたいです。
家:父の家の電気、水道、家賃は変わりに支払いして良いのか。(入院した場合等)
家にあるものは処分してよいのか(亡くなった時)
病院:病院代は支払っていいのか、保険の手続きとかはしてよいのか
生命保険:死亡保険の受取人が娘だが受け取ってもよいのか
葬式:してもよいのか。本人が葬式代を残していた場合使っていいのか
万が一、相続放棄できなくなると困るのでその他、これをすると相続放棄出来なくなる。という事項があれば知りたいです。
よろしくお願いします。
【ニックネーム】
こいちろ
【回答】
1.亡くなった人の財産を処分してしまうと相続放棄ができません
亡くなった人の財産の一部でも処分をしてしまうと、民法上は相続をしたとみなされてしまうため、相続放棄をすることができなくなってしまいます。
2.光熱費・家賃の支払いはしないほうがよい
相続放棄をするのであれば、父の光熱費や家賃については、父が死亡した場合、支払いをしなくてもよい費用ということになります。
そのため、父の家賃や光熱費については、代わりに支払いをしないほうがよいでしょう。
3.家の中のものは処分しないほうがよい
相続放棄をする場合は、亡くなった人の財産は処分することができません。
家財道具など経済的価値の低いものについても、将来的に債権者が相続放棄の効力を争って訴訟をしてきた場合などを考えると、処分しないほうが無難でしょう。
(もっとも、債権者がそのような事実を把握できるかは別の問題です)
4.連帯保証していない限り、病院代についても支払う必要はない
父が亡くなった際に、未払の医療費があった場合、相続放棄をすれば、支払う必要はありません。
しかし、もし連帯保証をしていた場合、相続放棄をすれば相続人として債務の支払は不要ですが、連帯保証人としての債務は支払う必要があります。
5.入院保険について受け取ることができない可能性が高い
入院保険については、基本的に被相続人が受け取るものであり、遺産になります。
死亡後に入院保険で支給されるものがあったとしても、遺産と思われますので、相続放棄をする場合は受け取れない可能性が高いでしょう。
ただし、正確なところは、保険の約款などを確認してみなければわかりません。
(約款の内容によっては、保険金は遺産に含まれず、受け取れるケースもありうるかもしれません)
6.生命保険は受け取ってもよい可能性が高い
生命保険は受取人が指定されている場合は原則として遺産に含まれません。
そのため、娘が受け取ることは可能と考えられます。
7.葬儀をすることはできるが、葬儀費用を遺産から出してはならない
葬儀をすること自体は問題がありません。
しかし、葬儀費用について、亡くなった方の財産から支払ってよいかは問題があります。
裁判例には、葬儀費用について、社会通念上認められる範囲であれば遺産から支出してよいと判断したものもあります。
しかし、「社会通念上」という基準は非常に不明確ですので、可能な限り、遺産から支出しないほうがよいでしょう。
(弁護士 山本こずえ)