【質問の要旨】
【題名】
廃墟となっているリゾート会員権について
【ご質問内容】
・他界した父が保有した区分所有リゾート会員権を処分したい。
・現在は母が権利者
・平成2年に父が購入
・運営会社は倒産、建物は廃墟化
・固定資産税:年数万円程度、母が現在も支払い中
・いずれこの会員権を私が相続予定
・父、母の実家を私が相続予定のため会員権は放棄できない。
このような内容ですが解決策のある相談はできますでしょうか。何らかの形で手放すことができればと思っていますが、私なりに調べた限りでは放置しかないようです。廃墟の建物が崩壊したり何らかの問題を起こした場合、損害賠償請求の可能性もあると思い心配しております。
会員権は運営会社が倒産しているため売却などもできず、土地の権利も売却は難しいと思っています。
何らかの解決策があればと思っています。
よろしくお願いいたします。
【ニックネーム】
まつたか
【回答】
1.リゾート会員権では何が問題となるか。
当事務所はこれまでに多数のリゾート会員権の解決を図ってきました。その経験に基づき回答します。
まず、リゾート会員権で問題になるのは次の2点です。
①会員脱退
リゾート会員から脱退して、会費の支払義務を免れる必要があります。
利用しなくても毎年5~8万円もの年会費の支払が必要になりますが、しかるべき手続をしない以上、毎年、この会費が延滞になります。
滞納した場合、リゾートホテル側の対応は次の2つになります。
A:請求書を送るが、支払のない場合にはそのまま放置する。
B:訴訟を起こして支払いを迫る。
法的には支払義務がありますので、もし、訴訟されれば支払を命じる判決が出ることになります。
ホテルを使用しなくても法的には年会費の支払いが必要になります。
②不動産持分権の譲渡
ほとんどのリゾート会員権では、ホテルの利用権と不動産(ホテルの敷地や建物の持分権)がワンセットで販売されていました。
その結果、リゾート会員は持分権を持たされ、通常は毎年数千円程度(但し、本件では数万円ということです。数口分もの多数の権利をもっているのか、それともかなり高額な土地建物なのでしょうか)の固定資産税等が課税され、支払が必要になります。
これも、ホテルを利用しない会員にとっては不必要な出費になります。
2.今回の案件では会費の支払は不要です。
今回の質問では、リゾートホテル業者が倒産しており、ホテルも利用できない状態のようです。
このような場合、リゾートホテル業者は破産や民事再生の申立をし、裁判所の関与のもとに手続きが進みます。
今回の件ではそのような手続きをしなかったのでしょう。
ただ、リゾートホテル側はホテルを会員に利用させるサービスができないのですから、会員としては年会費を支払う義務はありません。
3.持分権は移転ができない。
次に不動産持分権ですが、これは他人に譲渡しない限り、そのまま持ち続けざるをえません。
当事務所が受任した案件では全て持分権の譲渡を完了していますが、その場合、リゾートホテル自体が譲渡を受けるか、あるいはその指定する譲渡先に持分権を移転する処理をしています。
今回のようにリゾートホテルが事実上倒産しておればそのような方法は使えません。
自分で譲渡先を見つけない限りは持ち続けざるをえないという結論になります。
4.持分権の放棄も困難
持分権というのは不動産の共有ですので、持分権を放棄することができます。
この方法を使うことができないかを考えてみましょう。
もし持分権を放棄するのなら、他の共有者全員にその通知をし、しかも登記に必要な書類を取り寄せする必要があります。
しかし、他の共有者が多数であることや、リゾートホテル側の連絡がつかないことから全員への通知や書類の取寄せは困難です。
次に放棄しても、登記名義が変わらない限り、固定資産税等は相変わらず、登記名義人である相談者の方に課税されてきます。
この課税を防止するためには、持分権放棄を登記に反映させる必要があります。
しかし、他の共有者全員にそのような登記に協力してもらうことは、共有者が多数であることやリゾートホテルが倒産状態にあることから、実現不可能な話でしょう。
持分放棄を前提に裁判をすることも法律的には可能でしょうが、他の共有者を被告として相手にするのも、実際上、実現が難しい話でしょう。
5.持分を持っていると発生する問題点
昨年、伊豆の熱川温泉に旅行しました。
大きなホテルが建築されている一方で、多くのホテルが廃墟になっていました。
その中にはリゾートホテルもあるに違いありません。
もし、このホテルの建物が崩壊し、通行人が負傷した場合、その所有者(持分権者も所有者です)は損害賠償をする義務がある、これが法律の結論です。
6.結論
リゾートホテル業者がまだ運営をしている間であれば、その業者に持分権を譲渡するよう交渉して、解決することも可能です。
しかし、その会社が倒産をしてしまえば、持分権の譲渡先がなくなりますので、手放す現実的な方法はないという結論になります。
なお、知人で借財の多い人がおれば、その人に持分を譲渡し、その人が死亡したときに相続人全員が相続放棄をするということも考えられるということを付言しておきます。
《回答:弁護士大澤》