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【題名】
存命中の父の資産を調査する方法(父合意の基で)
【ご質問内容】
Q&A№370の質問と似ています。84歳の父の認知機能が衰え、預金残高など具体的にどれだけ資産があるのか確認が必要になりました。(施設入居など)
父からは、銀行口座は、インターネットバンクで、IDやパスワードはわからないと言っています。
また、公共料金の引き落としができなかったことはなく、必要な分はキャッシュカードで引き出しで用件は事足りているようです。
記憶が曖昧になってきているので、長男である私に銀行残高や火災保険、持ち家の謄本などを確認して欲しいと言われています。
また、銀行に取引状況など開示してもらうことは想定しておらず、父と一緒に作業をしてログインIDやパスワードを調べて残高を確認していく予定です。
私は作業自体構わないのですが、兄弟から「父の財産をもらっている」など在らぬ疑いをかけられたくないので、
事前に「証書」「委任状」「念書」など第三者から見ても不正のない証拠を予め準備したいと考えています。
どのような書式を準備すれば良いかご教示ください。
【ニックネーム】
cookazuyu1
【回答】
1.単なる調査だけなら法的には問題ない
相談者は、銀行に取引状況の開示を求めることは考えておらず、金融機関の残高や保険の内容等の確認を考えておられるようです。
口座から出金をするなど、新たに権利を発生させたり、消滅させることではないので、父の同意を得ているのなら、何ら法的な問題はありません。
ただ、法的な問題はなくとも、他の第三者、特に他の相続人になる立場の人が見れば《何をしているのか?》という疑惑を持たれる可能性はあるかもしれません。
それに対処するには、まず、父の同意を得ていることを明らかにすることでしょう。
具体的に言えば、《父からの「調査をしてくれ、手伝って欲しい」》という内容の意思表示を残しておくといいでしょう。
2.父との間の「証書」を作成する
問題となるのは、相談者が父に無断で勝手にしているのではないという点でしょう。
父の意思で相談者が調査するのだという証拠を残しておく必要があります。
弁護士的な発想からいえば、証拠として書面(証書)を作成するのも一方法です。
具体的には、父との間の調査依頼合意書の作成が考えられます。
仮に作成するとすれば、そのポイントとしては、
・依頼するのは調査だけであること
・施設入所等のために調査が必要なこと
・調査の範囲を明確にすること
・調査で得た内容を相談者が勝手に利用しないこと
・調査で得たID等を使用して、出金はしないこと
等ですので、この点を明確に記載しておくといいでしょう。
なお、当然のことですが、父の署名は自筆で、又、日付はきちんと入れてください。
3.父の意思であることをはっきりさせる他の方法
前項のような合意書作成が一番確実ですが、一方で《金融機関等の調査》としてはあまりに大げさという感じがします。
《そこまでするには、何か・・・》という勘ぐりもある可能性があります。
単なる調査の手伝いだけであるなら、父のその意思を明らかにする書面等の作 成で十分でしょう。
具体的に言えば、調査を手伝って欲しいという内容を記載した父から申し出を残しておくといいでしょう。
このような手段としては手紙や書面、ラインやショートメールを使えます。
また、スマホをお持ちなら、父の依頼の意思を動画で残すという方法もあります。
これ等の方法の方が、前記の証書などより、はるかに自然な感じがします。
なお、父の方からの意思表示には、次の内容も記載(発言)してもらうのが望ましいです。
・自分の能力が衰えてきたので単独では調査が困難である
・依頼するのは調査だけであること
・調査の範囲を明確に記載すること
また、ここでも作成日付がわかるようにしておく必要があります。
4.念書は必要か
相談者からの念書は特に入れなくてもいいと思います。
ただ、もし入れるのなら、次のような点を記載した念書を作成するといいでしょう。
・父の申し出を了解すること
・調査で得た内容を相談者が勝手に利用しないこと
・調査で得たID等を使用して、出金はしないこと
これらは書面かLINE、ショートメールなどという形で残されておくといいでしょう。
5.委任状の要否
銀行関係では取引状況など開示してもらわず、父と一緒に作業をしてログイン IDやパスワードを調べて残高を確認していくだけであれば、委任状は不要です。
ただ、相談者が火災保険の照会を行い、あるいは市町村から書面を取り寄せするについては、原則として委任状が必要です。
ただ、詳しくは当該保険会社及び市町村等にご確認ください。
(回答:弁護士 大澤龍司)



