![]()


【題名】
義妹が実母との連絡を取れなくした
【ご質問内容】
三年前に弟夫婦が母を連れ出した。
つい最近、弟が亡くなり、母をもう一度私の家に連れて帰ろうと思い、連絡をしました。
母も帰りたいと言ったので、再度連絡をしたところ、甥っ子が母の携帯に出て、「勝手なことをするな、お前とは縁を切っている、二度と連絡をするな」と言ったあとから、着信拒否と母の姉(叔母)に連絡があっても「電話に出るな」と言って私からの連絡を取れなくした。母の安否確認と年金の使い込みを調べたい。母を連れ戻したい。
嫁には姻族関係終了届けを書かせたい。
【ニックネーム】
悠理
1.母の安否確認と連れ戻しについて
今回のケースでは、相談者が母と連絡をとることができなくなっているということですので、まずは母の安否確認をする必要があります。
①生死の確認
まず、母が死亡しているかどうかを確認するには、母の戸籍を取り寄せします。
戸籍に母の死亡が記載されておれば、母が死亡したのであり、相続が発生します。
母が死亡しても死亡の届出がされないことは、まずないと思われるので、戸籍に死亡の記載がない場合には母は生存していると考えていいでしょう。
なお、相談者は子ですので、母の戸籍の取り寄せは可能です。
②住所の確認
次に、どこに住んでいるかを確認するには、住民票か戸籍附票(住所の変遷を記載している書類)を取寄せるといいでしょう。
なお、住民票は現在か以前の住所地がわかっていないと取り寄せが不可能ですが、戸籍附票なら本籍地が分かれば取り寄せ可能です。
また、戸籍と戸籍附票は同時に取り寄せが可能ですので、本籍地の市町村に併せて請求されるといいでしょう。
ただ、戸籍附票や住民票には、《届出のあった住所》が記載されているだけですので、住所を変更しても敢えて届出をしない場合には以前の住所が記載されているだけです。
本件では、弟らが相談者や他の親族に母の住所を知らせたくないために、住所変更届を出させていない可能性も考えられ、この場合には母の所在は分からないというほかありません。
③過去の案件では、こんなケースもあった
かなり昔に経験したケースでは、横浜に住んでいた推定相続人の一人が、大阪の堺に住んでいる父を横浜の自宅に連れて行き、自分に有利な遺言書を作成させて、すぐに横浜のいずこかの介護施設に入所させたという案件を使ったことがありました。
その案件では、住民票は横浜に移動させておらず、また、入所した施設も教えてくれなかったので、結局、父の居場所はわからず、連絡はとれないままに父が死亡してしまいました。
④どこにいるのかはどうやって調べるのか?
現在の居所を調べるために弁護士ができることとしては、郵送物の転送先を調査することぐらいしかありません。
この調査は弁護士会を通じて行いますが、転送届を出していない場合もあり、有効な手段とは言いがたいです。
その他の手段としては、以前の住所の近隣の方に聞きまわるということもありえますが、母自らの意思ではない転居など、近隣の人が転居先を知らないことが多いでしょう。
結局は、多額の費用を出して、探偵を頼むというしかないのが実情のようです。
⑤強制的な拉致といえるのであれば警察だが・・・
母の意思に反した強制的は拉致と言えるような場合には、警察に相談することも考えられます。
しかし、全く関係のない他人ではなく、将来相続人となる息子や娘が連れ去った場合などでは、拉致とはいいがたいことも多く、警察が積極的に動いてくれる可能性は低いでしょう。
⑥住所が判明したとき、何ができるのか?
母の現在の住所が判明した場合、当該住所地を管轄する市役所等の窓口(高齢者虐待の窓口等)に相談することが考えられます。
本件のように、一部の親族によって、本人と外部との連絡が遮断されている場合は、高齢者虐待の問題が疑われるケースとして相談を受け付けてもらえる可能性もありますので、一度市役所等の窓口に行くことを考えてみてもいいでしょう。
2.年金等の使い込みの調査
年金等の使い込みの有無を調査するには、母が取引している金融機関に対して取引履歴等の照会をすることが考えられます。
しかし、親子でも他人ですので、母の同意がない場合には照会はできません。
ましてや、母と会えないような場合には、同意を得る方法はなく、金融機関への照会は絶望的と言わざるをえないでしょう。
結局、母が生きている限り、相談者が母の年金等の使い込みの有無を調査することも難しいという結論になります。
なお、将来母が亡くなり相続が発生した場合には、相談者は相続人の立場で、金融機関に対して口座の有無や残高、過去の取引履歴(10年分)の取寄せ等の調査を行うことが可能になります。
その結果、弟の妻等の家族が母の財産を無断で使い込みしていたことが判明した場合には、相談者はその人物に対して不当利得返還請求等の請求をすることが考えられます。
3.姻族関係の終了は強制できない
「姻族」とは、配偶者の血族や自己の血族の配偶者のことをいいます。
今回のケースでいえば、相談者にとって弟の妻は「姻族」にあたります。
ところで、姻族関係の終了については、民法728条2項に規定があります。
同条は、夫婦の一方が死亡した場合、生存配偶者の意思表示によって姻族関係を終了させることができると定めています。
ただ、この条文からも明らかなように、姻族関係の終了は、弟の妻の意思で行われるものであり、他の第三者の意思では終了しません。
姻族関係は親子などの血族関係と比べると法的な結びつきは弱く、姻族関係があること自体によって通常は扶養義務が発生することはありませんので、感情的な点を別とすると姻族関係の終了を求める実益はありません。
4.もし、虐待等があるのなら
もし、母が拘束され、虐待されていると窺わせる事情があるのなら、警察や地域包括センターに相談されるといいでしょう。
また、法律上では、母を救い出すために裁判所に人身保護請求という手続をすることも可能です。
ただ、この手続きは難しいので、専門家である弁護士に相談されるといいでしょう。
(弁護士 大澤龍司、弁護士 山本こずえ)



