【遺言執行者の権限が強化されました】
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を有する者のことをいいます。
遺言執行者の制度が存在する意味は、遺言の執行を遺言執行者に委ねることによって遺言を適正かつ迅速に実現していくことにあると考えられています。
しかし、これまでの法律では、遺言執行者の立ち位置が曖昧で、迅速な実現化が妨げられるようなこともありました。
今回の改正では、極力そのような事が無いように規定し直されています。
【明確化のための文言変更】
旧民法1015条には「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす」という規定の仕方になっていましたが、今回の改正では、次のような内容に改められました。
《改正民法1015条》
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。
また、改正民法1012条1項も、以下のような規定になりました。
《改正民法1012条1項》
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
これらの規定については、文言は変わっていますが、実質的に遺言執行者の権限内容が変わったわけではありません。
ただ、自身にとって不利益な内容を実現された相続人から、「必ずしも相続人の利益のために行動しているとはいえず、代理人ではないではないか」とのクレームが出ていました。
そのため、「代理人」という言い方をやめ、「遺言の内容を実現するため」という文言を加えるなどして、遺言執行者は必ずしも相続人にとって利益となる行為ばかりやるわけではない、ということを明確化したものです。
また、下記の通りの、遺贈の履行についての規定も、従来の扱いを明文化したものです。
《改正民法1012条2項》
遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
この「遺贈」には、特定遺贈(「〇県×町の不動産をAに遺贈する」というように、特定の財産を指定して遺贈すること)だけでなく、包括遺贈(「遺産の4分の1をAに遺贈する」というように、相続財産の割合を指定して遺贈すること)も含まれます。
また、これは、遺言執行者がいる場合について規定したものですが、遺言執行者は必ず選ばなければならないわけではありませんので、もし遺言執行者がいなければ、相続人が遺贈の履行をすることになります。
(続きはまた次回に…)