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実例Q&A

相続問題で親族と関わらないで済むようにできるか【Q&A796】

2022年12月8日

【質問の要旨】

被相続人:祖母

2親等以内の親族:祖母の娘とその夫と子供2人、

         すでに亡くなっている息子の妻と子供二人(うち一人が相談者)

遺産分割協議証明書:あり(相談者の兄のもの)

その他:相談者は長年親戚付き合いがない、今後も関わりたくない

    分割協議証明書の内容があまりに少なく不審に思っている

 

・サインを拒むことはできるのか

・今後相続関係で関わらなくて済む方法はないか

 

 

 

【回答】

《遺産分割協議証明書とは》

遺産である不動産については、通常は全員が署名捺印した遺産分割協議書を作成して、それに基づき登記をします。

ただ、簡単に登記をする方法として、それぞれの相続人から遺産分割協議証明書をもらって、登記をすることがあります。

全体の遺産分割が終わっていなくとも、ある不動産を先に登記したい場合などに使われる方法です。

このような書面は、質問にあるように記載内容が少なくなります。

《サインを拒むことができる》

全体としての遺産分割協議ができていないのに、ある不動産だけ先に登記することに納得できなければ、遺産分割協議証明書にサインをする必要はありません。

断るのは自由ですので、署名等の拒否をしても結構です。

《相続にかかわりたくない相続放棄をする》

もし、遺産はいらない、相続紛争に巻き込まれたくない、親族とは関わりたくないというのであれば、自分に相続権がある親族が亡くなる度に、相続放棄をするとよいでしょう。

この放棄をすすると、相続人でなくなり、遺産争いの渦中から脱することができます。

なお、この放棄は、死亡という事実を知って3ケ月以内に、家庭裁判所に対してすることが必要になりますのでご注意ください。

参考までに言えば、被相続人が死亡する前に、その相続人が相続放棄をしても、それは無効になりますので、この点もご注意ください。

当方長年親族と連絡を取っておらず、今後も関わらないようにしようと考えております。

しかしながら先日祖母が亡くなったとのことで、

司法書士から遺産分割協議証明書なるものが郵送されてきました。

祖母から数えて2親等以内の親族は祖母の娘とその夫と息子二人、

(すでに亡くなった)息子とその妻と息子二人(うち一人が私)の計7人です。

 

内容は

“祖母が亡くなったため不動産全部を私の兄の所有とする”というもののみでした。

 

こういった書類は押印する人間に関係しない遺産については記載を省略することが出来る(?)

と聞いたことはあるのですがあまりに記述が少なく不審に思っております。

サインを拒むことは難しいのでしょうが、

せめてもの交換条件として今後親族が亡くなるたびに発生するであろう

こういったものを拒めないものかと考えています。

 

当方では“(借金等のマイナスを含めた)遺産や諸問題が発生しても今後当方に連絡することを禁止する”

といった念書を書いてもらう(?)くらいしか思いつかないのですが

なにか良い方法はございませんでしょうか。

お手数ですがご返信いただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

【ニックネーム】

TARO

【詳細な回答】

1 前提として

祖母の夫は、祖母より先に亡くなられていることを前提にします。

 

2 祖母の相続人は3人

被相続人の配偶者が既に亡くなっている場合は、相続人は、被相続人の子のみになります。

もし、被相続人の子が、被相続人より先に亡くなっている場合は、亡くなった子の子が、亡くなった子に代わって相続します。

本件では、祖母から数えて2親等以内の親族が7人いるとのことですが、祖母の息子(相談者の父)は既に亡くなっているため、祖母の相続人は、祖母の娘、相談者の兄、相談者の3人ということになります。

 

3 遺産の一部を分割する協議も可能だが、協議証明書への署名を拒否することもできる

相談者のもとに郵送されてきた遺産分割協議証明書には、祖母の不動産を誰に相続させるかしか記載がありません。

また、相談者の署名・押印欄しかないのかもしれません。

遺産である不動産については、通常は全員が署名捺印した遺産分割協議証明書を作成して、それに基づき登記をします。

ただ、簡単に登記をする方法として、それぞれの相続人から遺産分割協議証明書をもらって、登記をすることがあります。

全体の遺産分割が終わっていなくとも、ある不動産を先に登記したい場合などに使われる方法です。

このような書面は、質問にあるように記載内容が少なくなります。

全体としての遺産分割協議ができていないのに、ある不動産だけ先に登記することに納得できなければ、遺産分割協議証明書にサインをする必要はありません。

断るのは自由ですので、署名等の拒否をしても結構です。

ただ、その場合、相談者の兄が勝手に祖母の不動産を相談者の兄名義に変えることはできないため、相談者は遺産分割調停や遺産分割訴訟を起こされることになるでしょう。

 

4 相続紛争や親族に関わらずに済む方法

今後の連絡を禁止する念書をとっても、遺産分割のためには相続人全員の同意が必要であることから、必ず連絡がきます。

また、仮に、遺産分割協議証明書に相談者が署名をしても、他の相続人が署名しなければ、相談者も含めて、遺産分割調停や訴訟を起こされることになります。

もし、遺産はいらないから、相続紛争に巻き込まれたくない、親族と関わりたくないというのであれば、自分が相続権を有する親族が亡くなる度に、相続放棄をするという方法があります。

相続放棄は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に家庭裁判所に対してする必要がありますが、相続放棄をすれば相続人ではなくなるため、遺産分割協議をする必要もなく、遺産分割調停・訴訟を起こされることもありません。

参考までに言えば、被相続人が死亡する前に、その相続人が相続放棄をしても、それは無効になりますので、この点もご注意ください。

(弁護士 武田和也)

 

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