遺産相続が進みません。相続人は4組います。私ともう一組は法定相続に従い平等に分割することを主張しています。他の二組は互いに非難していて、互いに他方は相続する権利がないと言っています。そこで、私ともう一組の方は弁護士さんを雇い遺産相続をスムースに進めてほしいと考えています。私どもは、皆さんが平等に遺産を受け取るべきと考えています。さてここで質問です。遺産相続が進まないのは他の二組が争っているからです。ですので、私どもが弁護士さんを雇うのですが、その費用は4組に平等に負担してもらいたいと考えています。勿論、必要経費等を省いて4組平等に遺産分割することを前提にしています。他の二組は弁護士に相談することには合意していません。ですので弁護士さんにお願いするのは私ども二組です。彼らに弁護士さんの費用を平等に負担するように要求できますか?
【回答】
1.遺産分割の弁護士費用は依頼した相続人だけが負担する
相続人が4人いて、相談者を含む2人は法定相続分通りに分けるのが公平ではないかと考えているのに、他の2人の相続人が互いに非難し合って、そのせいで遺産分割が進まない状況にあるようです。
そこで、相談者ら2人は、弁護士に依頼して、遺産分割問題をスムーズに解決したいと考えておられるようです。
4人の遺産分割問題を解決するために弁護士費用が発生するのだから、弁護士費用は4人で等分に負担するのが平等ではないかとお考えになるお気持ちはよくわかります。
しかし、弁護士費用は、原則として、弁護士と委任契約を締結した者が、委任契約に基づき支払いするものです。
ただ、他の2人に支払った弁護士費用の一部を負担せよと請求でできるかが問題になります。
相談者らとしては公平な分割案実現のためにやむを得ず依頼したという気持ちでしょうが、他の相続人にとっては必ずしもそうでないかもしれません。
又、弁護士は依頼者の利益のために働くものであり、他の相続人のために働くものではありません。
そのため、他の相続人に自分が依頼した弁護士費用を分担させることはできないという結論になります。
2.裁判費用や調停費用と弁護士費用との関係
弁護士費用負担の問題は、相続以外の他の案件(例えば借金問題や交通事故等)でも問題になります。
裁判の場合、交通事故、医療ミス及び国家賠償の場合には、判決で加害者側に弁護士費用の一部が命じられることがあります。
これは交通事故や医療ミスでは保険があること、国は支払い能力があることからくる例外的な扱いです。
なお、判決で敗訴した側に裁判費用の支払を命じることが多いですが、この裁判費用は訴状の印紙代などであって、弁護士費用は入っていません。
なお、参考までにいえば、調停調書などでは、《調停費用は各自の負担とする》という条項を入れることが多いですが、これは調停をするに必要だった印紙代や切手代、場合によっては鑑定代などについては、出した者が自らの負担とし、それぞれの相手方に請求できないという意味です。
(弁護士 武田和也)