【質問の要旨】
・被相続人:父
・相続人:後妻、父の子(相談者)
・遺産:祖父と父名義の自宅(父、後妻、相談者の3人で住んでいた)等
・遺言書:なし
・遺産分割協議によって、自宅は相談者が取得することになった。
・後妻は現在施設に入所しているが、お金がなくなったら自宅に帰ると言っている。配偶者居住権は認められるのか。
【題名】
配偶者居住権について
【ご質問内容】
今年の2月に父70代が亡くなりその5ヶ月後に後妻60代が施設入所しました
預貯金等は後妻相続
自宅.田畑等は自分が相続する内容でまとまったのですが後妻がお金が失くなったら
自宅に帰る気でいるといってきました
自宅は父と亡祖父(平成4年没)の共同名義になっています
共同名義の場合配偶者居住権は認められないと聞いたのですが二人とも亡くなっている場合はどうなりますか?
自宅の名義変更をして配偶者居住権は認めないといいきればいいですか?
祖母(平成4没)実母(平成12年没)共になくなっています
祖母は一人っ子で祖父は婿養子
子どもがいなかったため父母夫婦養子
祖母は母の従姉妹にあたります
自宅は父 後妻 自分で住んでいて現在自分のみ居住しています
ご回答よろしくお願いいたします
【ニックネーム】
ねこ
【回答】
1 配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、簡単に言えば、被相続人が死亡したときに、その配偶者が被相続人の家に居住していた場合に、いくつかの要件をみたすことによって、それ以降もその家に無償で住み続けられる権利のことをいいます。
配偶者居住権が認められない場合として、被相続人が死亡時に、家を配偶者以外の者と共有していた場合があります。
2 配偶者居住権は成立しない
説明を分かりやすくするために、もともと祖父が持分1/2、父が持分1/2の割合で家を共有していたとします。
また、祖母死亡後に、祖父が遺言書を残さずに死亡し、祖父の遺産分割も行われなかったとします。
まず、祖父の死亡により、養子である実母と父が、祖父が有していた家の持分1/2を等しい割合で相続しています。
つまり、祖父の死亡時点において、実母は持分1/4を、父は持分3/4(=1/2+1/4)を有していたことになります。
その後、実母が死亡し、相続人は相談者だけなので、この時点で、相談者が持分1/4を、父が持分3/4を有していたことになります。
登記は祖父と父の共有名義のままですが、父の死亡時点において、家は、相談者と父の共有だったというわけです。
よって、本件事案において、登記名義を変更するしないに関わらず、配偶者居住権は成立しません。
3 配偶者短期居住権とは
配偶者短期居住権とは、簡単に言えば、被相続人が死亡したときに、その配偶者が被相続人の家に無償で居住していた(かつ現在も居住している)場合に、それ以降も短期間の間、その家に無償で住み続けられる権利のことをいいます。
短期間とは、家の遺産分割をする必要がある場合に、①遺産分割によって家を取得する人が決まったとき、又は②相続開始のときから6カ月を経過する日のいずれか遅い日までです。
配偶者居住権と違って、配偶者短期居住権は、被相続人が死亡時に、家を配偶者以外の者と共有していた場合でも成立します。
4 配偶者短期居住権は成立しない
ただ、配偶者短期居住権が認められる要件として、その不動産に「現在も居住している」ことが必要です。
ところが、本件事案では、後妻は施設に入所しており、家に居住していません。
そのため、居住要件を充たさず、配偶者短期居住権は成立しません。
(弁護士 武田和也)