【質問の要旨】
・被相続人:父
・父の子である相談者と母は相続放棄。
・相続人:父の親戚
・遺産:家、負債
・親戚から、父の家の中の私物を撤去するように要求されている。
・遺骨の供養は相続人に一任したい。
【題名】
相続放棄、私物、遺骨について
【ご質問内容】
父が負債を残して亡くなり私と母は父名義の持ち家を相続放棄し親戚が相続することになったのですが一切の私物を撤去して明け渡すようにと親戚の代理人弁護士から何度も通知書が来ます。
私物と言えど父の収入で購入してもらったものがほとんどの場合父の遺産として撤去の打診に応じない旨を主張することは可能でしょうか?
また、遺骨の供養について私と母は相続人に一任する意向の場合相続人が行う可能性のある手続きとしてはどのようなものがありますか?
【ニックネーム】
氷
【回答】
1 父の収入で購入されたことは撤去義務がないことの理由にはならない
父名義の持ち家に、私物があるということですが、それが誰の所有物なのかが問題になります。
相談者らの所有物が父の家に残っているのであれば、相談者らが撤去しなければなりません。
ですが、父の所有物であり、父の遺産であるなら、相談者らがそれを撤去する必要はありません。
父の収入で購入してもらった物だとしても、父が相談者らにプレゼントしたものだとしたら、それは相談者らの所有物です。
したがって、父の収入で購入してもらったという理由で、撤去に応じない旨を主張することはできません。
撤去しなければならないのに撤去しない場合は、訴訟を起こされる可能性があります。
2 祭祀に関する権利は相続とは別系統のルールで承継される
墓地、仏具などの祭祀に関する権利は、相続財産一般とは別の承継のルールが定められています。
祭祀主宰者(お墓や仏具等の管理や法要等をとりまとめ主宰する人)は、次の順序で決定されます。
①被相続人の指定
②その地方の慣習
③家庭裁判所の判断
相談者らは、相続放棄をしていますが、それは相続財産を承継しなくなったにすぎず、祭祀に関する権利まで放棄されたことにはなりません。
遺言書は残されていないようですので、その地方の慣習で、相続人が祭祀に関する権利を承継することになるなら問題ありません。
慣習は地方により異なりますが、長男かあるいは配偶者が承継者になるケースが多いと思われます。
しかし、そうでないならば、相続人は相談者らに協議を求めてくることが考えられます。
協議がまとまらない場合には、相続人が、祭祀主宰者を決めてもらうために家庭裁判所に申立てをする可能性が考えられます。
(弁護士 武田和也)