【質問の要旨】
・第1相続
被相続人:祖父の姉
相続人:祖父の姉の子、母の兄弟3人?
遺産:土地
・第2相続
被相続人:弟
相続放棄者:弟の妻、その子、母、相談者、その姉
遺産:建物(抵当権の設定つき。母と亡弟一家が居住)
負債
・将来母が亡くなったときには、亡弟一家も家を出る考えだが、空き家を管理しないといけないか。土地は売ることができるか。
【題名】
相続放棄後の家と土地
【ご質問内容】
実家の土地と家について
私から見て祖父の姉名義の土地既にどちらも他界
その場所で私は生まれ暮らして
成人後家を出ています
その後
その土地に弟名義の家を建て替え
母親と弟夫婦が住んでいました
3年前弟が家を担保に借金をし(家屋だけを担保)にしたまま
無くなり銀行以外にも多額の負債があったので
弟の嫁子供、母、私と姉全員が相続放棄しました。今現在、その家に家族がまだ住んでいます。祖父の姉名義の土地の固定資産税は
住んでる母が今も払い続けていて、家の固定資産税は
役所に相談に行くと住んでる人が払うと言われ弟嫁が払っています
母の兄妹は3人おります。祖父の姉の子供も生きてるので土地の相続人数は4人です
母の亡き後、土地や家はどのようにしたら良いですか。母の子供である私と姉は相続放棄しようと思います。母が亡くなれば
弟の嫁達も家を出ていくらしく
空き家のままになります
その空き家を管理しないといけないのでしょうか
また、土地は売ることができるのでしょうか
【ニックネーム】
まる
【回答】
1 親族関係
権利関係が複雑ですので、親族関係をつぎのとおり整理します。
- 相談者の祖父の姉、祖父の姉の夫はいずれも死亡し、祖父の姉に子が1人いる。
- 祖父と、祖母も死亡している。
- 祖父の子は相談者の母とその兄弟3人である。
- 相談者の父は死亡しているものとします。
- 母の子は相談者とその姉、亡弟がおり、亡弟には妻と子1人がいる。
2 現在の土地や建物の所有者
既に亡くなっている祖父の姉には子(第1順位の相続人)がいますので、その者が相続人になり、土地はその子の単独所有になります。
母の兄弟(第3順位の相続人)が土地を相続するのは、祖父の姉の子が相続放棄した場合のみであり、第1順位の相続人である祖父の姉の子と第3順位の相続人である母の兄弟が同時に相続人になることはありません。
次に、建物は相談者の弟名義ですが、その相続人である弟の妻、その子、母、相談者、相談者の姉の全員が相続放棄をしていますので、これらの人には建物の所有権がありません。
3 将来母が亡くなったときに相続放棄をすべきか
母は、土地についても建物についても所有権や共有持分権を有していません。
そのため、将来母が亡くなった場合に相続放棄をするか否かは、遺産を調査してから判断するのがよいでしょう。
4 母と弟家族は建物を管理しなければならない
相続放棄をしたとしても、母と弟家族が建物に居住(占有)している限り、建物を管理する必要があります。
この点については、2023年の相続法改正後の次の条文が参考になります。
《民法940条
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有 しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。》
5 相談者らは土地を売却できない
土地は、祖父の姉の子が所有ですので、母には所有権がありません。
そのため、母が亡くなったとしても、土地は母の遺産ではなく、相談者らが売却することはできません。
祖父の姉の子は土地を相続し、その所有権を取得していますので、売却ができます。
(弁護士 武田和也)