【質問概要】
・被相続人:母
・相続人:姉、相談者
・遺言書:なし
・遺産:自宅兼店舗(査定額8000万円)
・その他の事情
姉が個人事業主をしており、母と相談者が従業員だった。
平成24年から姉が母の通帳を管理
それ以降、約4000万円の使途不明な出金があった。
姉は、母の口座から出金したお金で、相談者への給与、材料費、姉の所得税の支払に充てたと回答。
母への給与は支払われていない。
【題名】
使途不明金
【ご質問内容】
親が興した個人商店を父の死後 姉が事業主 母と妹(私)が従業員として働く。ワンマン経営。今年1月母他界。姉は引退の意向 私は続けたい。母の自宅兼店舗の査定額の1/2(4千万円)を姉に支払えば店を続けられる。母の通帳に何度も引出した記録あり(一度に数十万〜百万、ひと月に500,600万引出年も有)合計4千万。使途不明分を材料に姉に支払う分をできるだけ減らしたい。
H22母認知症の診断 H24以降骨折入院繰り返しH29施設入居 利用料は折半支払
H24より通帳は姉が管理 以後不審な引出
入居するまで姉妹共に毎日母と顔を合わせており、高額な医療費や買物なかったのは確か。そも質素倹約の人
使途問うと店の支払い(私含む従業員給与 材料費 所得税等)にあてたと返答
確定申告は姉妹其々行う
共有スペースに姉の通帳あり申し訳ないが調べるとH24〜毎年1千万以上のカード支払い。姉の所得は4〜7百万
母の日記から姉の代より母は無給 姉は昔から何度もお金を無心。定期解約 用立てる/いつまでもあると思うな等記載
弁護士相談いくも店の為の支払は妹も益となり厳しい。妹の承諾なしに親の貯金を勝手に店の運転資金で使って問題ないのか。領収書なくても通りますか。放漫経営 親の貯金も使い果たし相続分はもらって引退。店には顧客もついており黒字決算なので立て直したい気持ですが2千万しか用意できません、泣寝入りしかないのか
【ニックネーム】
馬鹿な子ほどかわいい母をもち父の店の為と頑張ってきたが結果貧乏くじをひいていたと分かり心折れそうな者
【回答】
1 前提
個人商店(什器設備や取引先等)を、父から姉が相続したものとして、以下回答します。
なお、もし、個人商店の相続がはっきりしていないのであれば、この際、父の遺産としてその分割の話を明確にしておくべきでしょう。
2 相談者への給与、材料費、姉の所得税について
父の死後は、姉が事業主として個人商店を引き継ぎ、母と相談者はあくまで従業員として働いていました。
そうすると、姉が雇用主となり、母及び相談者が労働者として、雇用契約が締結されていたものと考えられます。
労働者への賃金を支払うべき義務を負っているのは姉ですので、相談者への給与を、母の預金口座から支払うのはおかしいということになります。
相談者への給与支払いや、材料費、姉の所得税の支払に充てるために母の口座から出金した金銭については、母が姉に対して返金するよう求める権利(債権)があったということになります。
この債権も遺産になります。
この債権の1/2を相談者が相続していますので、相談者への給与、材料費、姉の所得税等の支払に充てるために母の口座から出金した金額の1/2を、相談者は姉に対して支払うよう求めることができます。
なお、母が給与なしとの点は、母が姉の手助けを無償ですることを納得していたのであれば、請求は難しいでしょう。
3 その他の使途不明金について
平成24年以降、姉が母の財産を管理しており、合計4000万円もの出金があるようです。
そのうち、使途不明のものについては、何に使ったのか説明を求め、領収書の提出等を求めるべきでしょう。
証拠もなく、合理的な説明もないものについては、姉が取り込んだものとして、その1/2を相談者が姉に対して請求するとよいでしょう。
4 不動産の査定額の検討も有効
不動産の査定額が8000万円だったようですが、その査定額が適切かどうかは分かりません。
相談者から複数の不動産業者に対し、簡易査定(通常は無料です)を依頼し、8000万円より低い金額で評価してくれた業者があれば、その査定金額を姉に示して、交渉するとよいでしょう。
(弁護士 武田和也)