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実例Q&A

兄が父の預金を取り込んだら?【Q&A791】

2022年11月29日

【質問の要旨】

被相続人:父(昨年12月に他界)

相続人: 兄、相談者

遺産について:話し合いなし

その他:兄が父の口座から、小銭だけを残してすべて自分の口座へ現金を移した

・横領ではないのか、罰則はないのか

 

【回答】

1 犯罪になるが処罰されないということで警察は動かない

兄が父の口座から勝手に預金を移した行為は、窃盗、横領、詐欺などの犯罪にあたる可能性があります。

ただ、刑法では今回のような親族間の窃盗や横領は処罰しないと定められています(このようなケースを親族相盗例といいます:刑法257条参照)。

そのため、仮に警察に行っても、警察は当事者間で解決してくれ(いわゆる《民民の問題だ》)といって動いてくれないことがほとんどです。

2 相続の発生後は、原則、金融機関の口座は凍結され、相続人全員の同意がないと引き出しや解約はできません

そのため、今回の質問は父の生前に引き出されたものとして回答します。

まず、生前の引き出しにつき、父が同意している場合には、特別受益として、引出分を遺産にあったものとして、遺産分割がなされます。

兄が生前に引き出した分は、遺産分割で支払いを受けたという扱いになります。

もし、父の同意がない場合は、預金を移した行為は不法行為又は不当利得になりますので、父は兄に対し引き出した金銭の返還請求ができます。

この権利は父が死亡した時には、各相続人がその相続分に応じて取得します。もし、兄が1000万円を引き出しており、相続人が兄と相談者の2人であるとすると、あなたは500万円の返還請求権を相続することになりますので、兄にその分を返還請求することが可能です。

 

【題名】

 遺産を自分の口座に入れ平然

【ご質問内容】

 昨年12月に父が死去。東京在住の兄と大阪在住の私が相続人。 四十九日がコロナで中止となり、10月の京都での一周忌まで遺産についての連絡なし。会っても話を切り出さない為 聞くと不機嫌になり  「お前には○○円だ」言い説明しない。翌日 電話すると 「父の口座に小銭だけ残して全て自分の口座に入れた。罪にはならない。自分の口座はプライバシーなので見せられない」との返事がある。横領ではないのかと腹がたつ。罰則はないのか。

【ニックネーム】

 メガネ

 

【詳細な回答】

1.犯罪として問題になることはありません

今回のケースでは、相談者の父が亡くなっています。

相続人は相談者と兄2人なので、父の遺言書が無いのであれば、基本的には相談者と兄が遺産を2分の1ずつ分けることになります。

しかし、今回、兄は父の口座からお金を引き出し、自分の口座にほとんど入れているので、遺産が少なくなっています。

これは、たとえば、詐欺や横領、窃盗など、犯人が警察に逮捕されて、刑事裁判になるような犯罪になるのでしょうか?

結論からいうと、犯罪にあたる可能性はありますが、実際に犯罪として処罰されることはありません。

たとえば、兄が父の生きている間に無断でそのような行為をした場合、窃盗、詐欺、横領のいずれかの犯罪が問題となりえます。

しかし、実際は、このような家族内の窃盗、詐欺、横領などについては、警察からは、家族内のもめごととして対応してもらえないことがほとんどです。

そのため、相談者としては、犯罪として処罰を求めるのではなく、兄に対し、金銭の請求を考えることになります。

2.兄か金銭の返還を求めることはできるか?

1)預金をどのように移したのか

今回のケースでは、兄が父の口座から預金を移していますが、兄は一体いつどのように預金を移したのでしょうか?

銀行口座の持ち主が亡くなると、預金口座は凍結してしまうのが通常なので、もし、父が亡くなった後に移したのだとしたら、預金口座が凍結される前に行っていることになります。

一方、父が生きている間に預金を移したとしたら、兄は父から財産管理を任されていたのか、それとも父の意思に反して預金を移したのかどうかが問題となります。

2)訴訟か調停

①父の意思に反していない場合

たとえば、兄が父を長年介護していたなどの事情で、兄が父から預金を移す許可を得ていた場合、“特別受益”という問題になります。

特別受益というのは、いわば、遺産の前渡しのようなものです。

そのため、特別受益がある人の相続分は、少なくなります。

このような問題については、通常、まずは弁護士に依頼をして、相続財産の調査などを経た上で、相手と交渉をします。

相手との交渉で解決しないという場合、家庭裁判所に対して、遺産分割調停を起こして、その手続の中で解決されます。

調停の手続は、基本的には当事者同士の話し合いということになります。

当事者の間には、調停委員という専門家が2人入り、双方の言い分を聞いた上で、解決案を示してくれます。

②父の意思に反していた場合

ア 生前に移した場合

たとえば、父が生きている間に、兄が父の意思に反して勝手に預金を移した場合、父は兄に対して、不法行為に基づく損害賠償請求権をもっていることになります。

この場合、父が亡くなると、あなたが父の損害賠償請求権を相続することになります。

イ 死後に移した場合

父が亡くなった後、口座が凍結されるまでの間に兄が預金を移したという場合、あなたは兄に対して、不法行為に基づく損害賠償請求権を持っていることになります。

なぜならば、父の預金は、父が亡くなると相続人同士が共有している状態になり、兄が預金を勝手に移した場合、あなたの共有持分まで侵害していることになるためです。

ウ 訴訟をすべきか

生前に移した場合と死後に移した場合、いずれの場合も、あなたは兄に対して損害賠償請求権を持っているということになります。

このような場合、通常、まずは弁護士に依頼をして、相手と交渉をしてもらいます。

交渉で解決できないという場合、地方裁判所に訴訟を提起して、金銭の返還を求めるということになります。

ただ、このような紛争についても、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることで、解決を求めることもできます。

いきなり訴訟を起こすことは避けたいという場合、まずは調停を申し立ててみてはいかがでしょうか。

 (弁護士 山本こずえ)

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