【題名】
再転相続について
【ご質問内容】
再転相続の相続人の範囲について教えてください。
以下の事例の時に、被相続人Aの相続人は誰になりますか。
被相続人Aには妻Xと子Y、母B、兄C、妹Dがいます。AがR6.1.2に亡くなり、相続が発生しました。Aの相続人は全員、相続放棄を考えていました。しかし、母Bが、妻Xと子Yの相続放棄手続きを待っている最中、かつAが亡くなってから3ヶ月以内に亡くなっていまいました。仮に日付けを決めると、Bが亡くなったのが2/1、XとYの相続放棄申述が受理されたのが3/1です。
Bの相続人はY(代襲相続)、C、Dとなり、YはBの相続放棄をして、CとDはBの相続は承認して、Aの相続(再転相続、1次相続)は放棄しました。
この時、Aの相続人は誰になりますか?もし、C、DがAの相続人になった場合、CとDは相続放棄をしたいため、1度再転相続としてAの相続放棄手続きが受理されていますが、再度、相続放棄手続きを行わないといけないのでしょうか。
最終的に、Aの相続人が全員相続放棄をして、相続人不存在として相続財産清算人をたてることを目標としているようです。
また別の事例で、相続人の範囲を教えてください。
被相続人Aが亡くなり、妻B、子Cに相続が発生しました。BとCはAの相続を承認しました。その後、Bが亡くなり、CはBの相続も承認しました。それからしばらくして、Aの兄Xの相続がAに発生していたことを市役所からの手紙等でCが知ったとします。AとXは全く連絡を取り合わない関係であったため、Aは生前、Xが亡くなったことも知らず、相続が発生していたことを知りませんでした。CはXの相続放棄をしたいです。この時、Xの相続権は、CにはAから直接相続で発生している分と、Bに発生した相続分を相続したことで発生している分の2つがあるというように考えていいのでしょうか。また、CがXの相続放棄をするには単にXの相続放棄をするだけでいいのか、さらにBを経由した分として相続放棄しなくてはならないのか、Cが相続放棄が完了した時、Bの持ち分のXの相続権はどこに行くのでしょうか。
お忙しいところ長文での質問で申し訳ありませんが回答をよろしくお願い致します。
【ニックネーム】
あ
【回答】
1 事例1
1)Aの相続人
まず、Aが亡くなった時点では、Aの妻X及び Aの子Y(第1順位)が相続人になります。
ただ、XとYがAの相続を放棄した場合、XとYは相続開始時(=A死亡時)からAの相続人でなかったとされます。
その結果、相続開始時に生存していたAの母B(第2順位)がAの遺産を全部相続します。
2)Bの相続人
Bが死亡したとき、その相続人はBの子であるAとC、Dです。しかし、Bの子Aが母Bより先に死亡しているので、Aの子Yが代襲相続します。
したがって、Bの相続人はC、D、Yとなります。
3)再転相続
再転相続とは、相続人が相続(1次相続)を承認・放棄せずに熟慮期間内に死亡した場合、1次相続を承認・放棄する権利を含めて、死亡した相続人の権利義務を相続(2次相続)することです。
事例1では、Aの相続人BがAの相続を承認・放棄せずに熟慮期間内に死亡しているため、Bの相続人は、《Aの相続を承認・放棄する権利》を含めて、Bを相続(再転相続、2次相続)します。
Bの相続人は、Bが有していた《Aの相続を承認・放棄する権利》に基づいて、Aの相続(1次相続)を放棄することができます。
Bの相続人がAの相続を放棄した場合、Aの相続人がいなくなるため、Aの相続財産につき、相続財産清算人を立てることができます。
なお、この場合でも、Bの相続人は、Bのみを相続することができます。
2 事例2
1)Aの相続
Aの相続人は、Aの妻BとAの子Cのみです。
BとCの相続分はそれぞれ2分の1ずつです。
2)Bの相続
次に、Bの相続人はCのみです。
Cは、Bの遺産を全て相続します。
3)再転相続
Aは、Xの相続人であることを知らずに亡くなっており、Xの相続を承認・放棄していません。
そこで、Aの相続人はXの再転相続人となります。
BとCは、Aが取得したXの相続財産につき、2分の1ずつ相続分を有します。つまり、Cは、㋐Aが取得したXの相続財産の2分の1を有し、これ(㋐)を放棄できます。
また、Cは、B死亡時に、Bが有していた《Aが取得したXの相続財産の2分の1》を相続し、これ(㋑)を放棄できます。
4)相続放棄しうる期間
ただし、Cは、Xの相続について、Cが「自己のために相続の開始があったことを知った時から」3か月以内に放棄しなければなりません(916条)。
「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、判例で、「相続の承認又は放棄をしないで死亡した者(A)の相続人が、当該死亡した者(A)からの相続により、当該死亡した者(A)が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を、自己(C)が承継した事実を知った時」であると解されています(最判令和元・8・9民集73巻3号293頁)。
事例2では、「Cが、Aからの相続により、Aが承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を、Cが承継した事実を知った時」とは、「Cが、AがXの相続人に当たる旨の手紙等を市役所から受け取った時」になります。
5)結論
以上より、Cは、AがXの相続人に当たる旨の手紙等を市役所から受け取った日から3か月以内であれば、Xの相続を放棄できます。
このとき、Cは、㋐Aが取得したXの相続財産の2分の1と、㋑Bが有していた、《Aが取得したXの相続財産の2分の1》を放棄することになります。
㋐と㋑はどちらもXの相続財産であるため、Xの相続を放棄する旨を申述し、Cが㋐と㋑の双方を相続した旨を申述書に記載することになるでしょう。
そして、CがXの相続を放棄した後、Cを除くAの相続人が㋐を、Cを除くBの相続人が㋑を相続することになります。
Aの相続人やBの相続人がC以外にいない場合、㋐と㋑は国庫に帰属します。
(鳥羽彩水香)