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実例Q&A

生前出金の違法性と認知症【Q&A789】

2022年11月18日

【質問の要旨】

被相続人:母(9月に他界)

相続人:父、長女、相談者

母の状態:認知症、要介護4

その他:父が長女に頼んで、母の預金から引き出している

父が長女に依頼して母の預金からお金を引き出すことは、違法か?

 

 

【回答の要旨】

人のお金を勝手に引き出す行為は犯罪=違法である。

しかし、家族間では犯罪にはなりにくい。

他方で、勝手にお金を引き出した父または長女に対して、母はお金を支払えと求める権利がある。

この権利は、父と長女と相談者が相続している。

しかし、このようなケースではしばしば「勝手」にお金を引き出したかどうかが争いになる。

本件では、お金が引き出された当時、母の認知症がどの程度進んでいたかも、考える必要がある。

 

母が認知症で物事の判断が出来なくなってから、父は長女に頼んで母の預金からお金を引き出しているのが、

最近わかったのですが、これって違法でしょうか?

母は要介護4まで進み、9月3日に老衰で亡くなりました。

ご相談よろしくお願いします。

【ニックネーム】

 魔法つかい

 

【回答】

第1 犯罪として処罰されることは無い

人のお金を勝手に引き出す行為は、窃盗罪や横領罪に当たり、違法です。

しかし、家族の間では、『法は家庭に入らず』という諺があるとおり、刑法では処罰することができません。

厳密には、銀行に対しての犯罪が成立するかもしれませんが、本件のように家族の預金おろしたという場合には、

現実に警察が動くことは、まず無いでしょう。

 

第2 お金を支払うように求めることはできる

1 家族も一番身近な他人である

しかしながら、人のお金を勝手に引き出す行為は、たとえ家族の間であっても、お金を返せと求めることはできます。

民法では、『家族も一番身近な他人』であると、覚えておかれるとよいでしょう。

2 どのような責任を負うのか

お金を引き出された人は、勝手にお金を引き出した人に対して、そのお金を払うように求める権利を持っています。

これは、「不法行為」(民法709条)や「不当利得」(民法704条)に基づく請求権です。

3 誰が、その権利を持っているのか

しかし、お金を引き出された母は、もうすでに亡くなりました。

そうすると、母のお金を払うように求める権利は、父と長女と相談者に、相続されていると思われます。

したがって、それぞれの相続分に従って、勝手にお金を引き出して自分のものにした人、本件では父または長女に

お金を支払うように求めることができます。

 

第3 母の認知症が与える影響

1 よく争いになること

ここまでは、母のお金を父または長女が「勝手」に引き出したことを前提にお話ししました。

しかし、母親が認知症の場合であっても「勝手」に引き出したかどうかは、裁判でもよく争いになります。

2 「勝手」に引き出したと言えない場合

母の預金口座から長女がお金を引き出したことが判明したとしても、次のような場合には、

「勝手」に引き出したとはいえなくなります。

① 母の依頼によって、長女が引き出した

② 長女が引き出し、母の為に使った。

②の場合には、「勝手」に引き出されたともいえますが、やはり母の為に使われているので、

お金を支払うように求めることができません。

3 認知症が与える影響

認知症が軽度の場合には、①及び②の可能性があります。

要介護4といえば、比較的重度の認知症の可能性があります。

しかし、要介護度と認知症の程度は必ずしもリンクしている訳ではないので、お金を引き出した時点で、

《母が、人に依頼することができる状況》であったかどうかが、問題になるでしょう。

認知症が重度の場合には、①の可能性がなくても、②の可能性があります。

引き出したお金を、母の治療費、生活費、入院費に使ったという場合には、民事上の責任を問うことは難しいでしょう。

(弁護士 岡本英樹)

 

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