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実例Q&A

生前贈与と特別受益【Q&A 774】

2022年9月5日

【質問の要旨】

・老母(年金生活)と兄がおり各々別に生活

・母の家の老朽化に伴いリフォームが必要

・母の家と土地を依頼者に生前贈与し、

 依頼者の家と土地を売却してその資金をリフォーム費用にし同居予定

・これは特別受益にあたるか

 

 

【回答の要旨】

・母の土地と自宅の贈与を受けることは特別受益にあたる

・リフォームによって、相談者の取り分が大きく変わることはない

・母親から持ち戻し免除の意思表示をしてもらえば特別受益にはあたらないため、

 母親にその意思があれば遺言書を作成しておくことが望ましい

私には老母と兄がおり各々別に生活していました。母の家が老朽化し早急にリフォームする必要になり、母は年金生活のため母の家と土地を私に生前贈与し私の家と土地を売却してその資金でリフォームし同居します。これは特別受益になりますか?

【ニックネーム】

 アカゲラ

 

【回答】

1 母の土地と自宅の贈与を受けることは特別受益にあたります

 被相続人が、生前に、相続人に対して行った「生計の資本としての贈与」は、特別受益に該当します。

 「生計の資本としての贈与」とは、生計の基礎として役立つような財産上の給付をいいます。
 実際にどのようなものが「生計の資本としての贈与」に当たるかは、贈与の目的や、対象物の金額等を踏まえて、判断していきます。

 母の土地と自宅を相談者に贈与することは、母親のみならず相談者の生計の基礎にとっても役立ちますし、母親の財産全体に占める価値も大きいでしょうから、特別受益にあたるでしょう。

 他方で、相談者は、ご自身の土地の自宅を売却して、その費用をリフォームに充てることを予定しているとのことです。

 そこで、次に、リフォームと特別贈与との関係について、少しご説明しておきます。

 

2 リフォームによって、相談者の取り分が大きく変わることはありません

  特別受益とは逆に、被相続人の財産の増加に「特別の寄与」をした相続人には、寄与分が認められます。

 しかし、先に贈与を行った後にリフォームをした場合には、それは相談者の財産に対する寄与であって、母親の財産に対する寄与ではないので、寄与分にはありません。

逆に、先にリフォームを行った後に贈与をした場合には、自宅の価値が増大した分だけ、寄与分として、認められる可能性があります。

しかし、その自宅の価値が増大した分だけ、特別受益の金額も大きくなりますので、相談者の取り分は大きく変わることはないでしょう。

 次の例で考えてみましょう。

例)自宅の価値500万円 リフォーム代金500万円 リフォーム後の自宅の価値750万円

 リフォーム後に価値が増大した250万円が寄与分として認められる可能性があります。

 しかし、特別受益の金額は、リフォーム後の自宅の価値である750万円となります。

 したがって、差し引き500万円が相談者の取り分の計算上、控除されます。

 この金額は、先に500万円の自宅の贈与を行った場合の特別受益の金額と、同じになります。

 実際には、税法も絡んでくるので、全く同じになることはありませんが、最終的な相談者の取り分が、大きく変わることはないでしょう。

 

3 母親から持ち戻し免除の意思表示をしてもらえば特別受益にあたりません

 母親からの贈与を特別受益と認められないようにするため、相談者が取りうる方法としては、母親による「持戻し免除」の意思表示を形に残しておくという方法があります。

 「持戻し免除」とは、簡単にいえば、特別受益としないということです。

 すなわち、各相続人の取り分を計算するときに、母親から相談者への生前贈与は考慮せずに、母親の死亡時の全財産を兄と平等に分けることを意味します。

 この「持戻し免除」は、被相続人の意思表示によりすることができます。

 しかし、「持戻し免除」の意思表示は相続開始後に争われることが多いので、母親の意思表示を形に残しておくことが重要です。

そこで、実務では、遺言書を作成しておいて、後の憂いを無くしておくことが多いかと思います。
 したがって、もし、母親にその意思があれば、遺言書を作成しておくことが望ましいでしょう。

 もっとも、相談者としては、持戻し免除の意思表示により兄との関係が損なわれないか心配になるかもしれません。

 そこで、次の2点について、補足をしておきます。

  • 兄の遺留分を侵害してしまう可能性があること

持戻し免除の意思表示をすると、生前贈与は特別受益とはなりません。
しかし、遺留分の計算においては、特別受益と同じように、相談者が受けた贈与も考慮されます。

不動産以外に母親の財産が大きくなければ、兄の遺留分を侵害し、その場合には兄から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

それを未然に防止するためには、兄の遺留分を侵害しないような、遺言書を作成することが考えられるでしょう。

  • 持戻し免除の理由にも言及しておくこと

相談者は、自宅をリフォームして、高齢の母親と同居する予定とのことです。

母親もそのことに期待して、自宅を贈与することにしたのでしょうから、遺言書にも、同居して面倒を見てもらえるから持戻しを免除することにしたという理由を明記しておくとよいでしょう。

(弁護士 岡本英樹)

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