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実例Q&A

生命保険と遺留分侵害額請求【Q&A №712】

2020年12月4日

【質問の要旨】

・公正証書では、父の遺産(預金6,000万円・受取人後妻の生命保険金3,000万円)は全て後妻に相続となっている

・後妻に遺留分減殺請求を通知した

・弁護士より生命保険金3,000万円は特別受益と考えられるとアドバイスあり

・後妻からは相談者(先妻の子)への遺留分として1,500万円が法務局に供託されており、遺留分の調停は不成立となっている

・後妻が生命保険金の特別受益の問題を無視して、債務不存在確認訴訟を申し立てることは可能か?

 

 

【回答の要旨】

・生命保険金は、原則として遺産に含まれない

・但し、著しく不公平といえる事情があれば、相続財産として扱われることもある

・著しく不公平かどうかの基準

・債務不存在確認訴訟を申し立てられればその中で生命保険を問題にすればよい

 

【ご質問内容】

お世話になります。

私の父が5年ほど前に他界して相続が発生しました。

相続人は私(先妻の子)と後妻を合わせての2名です。

父の遺産としては、預金6000万と受取人後妻の3000万の生命保険金があります。公正証書では、全ての財産を後妻相続となっています。後妻には遺留分減殺請求を通知済みです。

後妻受領の3000万の生命保険金については、弁護士さんからは特別受益と考えられるとアドバイスがありました。相手方からは一方的に、私への遺留分として1500万が法務局に供託されています。遺留分の調停は不成立となっています。

私としては生命保険金に対する遺留分についての判例がないのですぐには遺留分訴訟を申立てるつもりはないのですが、相手方が、生命保険金の特別受益の問題を無視して、債務不存在確認訴訟を申し立てる事は可能なのでしょうか。

 

 (インディペンデンス)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

【生命保険金は、原則として遺産に含まれない】

保険金受取人として特定の相続人を指定した場合、生命保険金は遺産には含まれないとするのが裁判所の判例です。

その理由は、生命保険金の支払いは、生命保険契約に基づいて支払われるものであり、被保険者の死亡と同時に、受取人に指定された相続人の財産になるという性格を持っていると考えられているからです。

したがって、生命保険金の受取人が後妻になっていた場合には、保険金は後妻が単独で取得し、あなたがもらう権利はないですし、また、遺産の中にも入らず、遺留分減殺請求をする際にも基礎財産にならないというのが原則です。

 

【但し、著しく不公平といえる事情があれば、相続財産として扱われることもある】

ただ、遺産総額と対比して、保険金を受け取る相続人と他の相続人間で著しく不公平となるような場合もあります。

そのような場合には、例外的に生命保険を遺産の中に入れて遺産分割なり遺留分の計算をすることができることになります。

つまり、その相続人が受け取った保険金を特別受益として、遺産分割時に考慮するということです。

この特段の事情としては、

①保険金額と遺産総額とを比較して、生命保険金の金額があまりに多額で割合としても大きい。

②保険金の受取人が多額の保険金を受けるべき理由(同居していたか、介護等の貢献をしたかなど)がない。

というような事情が考えられます。

 

【著しく不公平かどうかの基準】

過去の裁判例では、遺産総額が約8423万円、生命保険金額が約5150万円、生命保険金の遺産総額に対する割合(5150万円÷8423万円)が約61%になるケースでは、生命保険金が特別受益に当たることを認めた高等裁判所の決定があります。

なお、単なる生命保険の割合だけで特段の事情の有無が判断されるのではなく、婚姻期間や同居の有無、介護等の貢献をしたかという事情も考慮して判断されますので、この点も注意が必要です。

 本件では、遺産が6000万円であるのに対し、生命保険金が3000万円ということですので、生命保険金の遺産総額に対する割合(3000万円÷6000万円)は50%と、上記高裁決定の事案より低いです。

 そのため、その他の事情(同居の有無、介護等の貢献をしたか)にもよりますが、生命保険金が特別受益となって遺産に持ち戻される可能性はあまり高くないと思われます。

 

【債務不存在確認訴訟を申し立てられればその中で生命保険を問題にすればよい】

 ご相談では、後妻が生命保険金の特別受益の問題を無視して債務不存在確認訴訟を申し立てることが可能かどうか、とのことですが、後妻側が債務不存在確認訴訟を提起してくることはあまり考えづらいように思うのですが、提起すること自体は可能です。

ただ、仮に提起されたとすれば、あなたはそれに対して遺留分侵害額請求の反訴を申し立て、生命保険が特別受益となる結果、遺留分が1500万円以上になることを主張すればよいのではないでしょうか。

 

(弁護士 岡井理紗)

 

 

 

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