【質問の要約】
被相続人:母方の従兄弟
相続人:なし
生命保険の受取人が被相続人の親となっているが、既に他界している。
相談者が葬儀費用を支出したので、生命保険金を受け取りたいが、何らかの方法でうけとることはできないか?
【ご質問内容】
母方のいとこが63歳で先日亡くなりました。両親はすでに他界、直系の祖父母から孫、兄弟姉妹もいなく葬儀は従兄弟である私が行いました。いとこが加入していた生命保険会社Aに連絡を取りましたが受取人は親の名前でした。保険金の請求をお願いしたら叔父の戸籍謄本を取り、いとこのほかに兄弟がいないことを確認し、また相続権のないいとこは家庭裁判所に行き財産管理清算人を決めて保険金が請求できると連絡がありました。
財産管理管理人は親族で話し合い土地家屋も放棄し役場にも届け済ですが葬儀代がマイナスになりました。今回は何とか葬儀代だけでも保険金が受取れないかの相談です。いとこは3年前、交通事故に遭いその際、身体能力に自力で買物が非常に困難な障害が残り亡くなりました。3年前の交通事故で入院中の病院でA社と私、いとこと会っていますが親族の連絡先は私になっており、その際に保険金の受取人の確認をしていなっかったのが本当に悔やまれます。
何らかの方法で、生命保険の受取をできないでしょうか?宜しくお願い致します。
【ニックネーム】
たこ
【回答】
結論:保険金は受け取れない可能性が高いが、まずは約款の確認をすべき
1.相談者は保険金を請求できるか?
生命保険を受取ることができるのは、保険契約で受取人と指定されている人です。
受取人が既に死亡している場合は、保険契約で誰が受取人になるかが決められ、その人に保険金が支払いされます。
この詳しい内容は、保険約款に記載されていますので、是非、ご覧になるといいでしょう。
もし、約款などであなたに請求する権利があれば、あなたが独自に保険会社に請求すればよく、相続財産清算人の選任は不要です。
2.相続財産清算人について
今回ご相談のケースでは、相談者の母方のいとこが被相続人となっておりますが、法定相続人(配偶者、子ども、直系尊属、兄弟姉妹)が既に全て死亡しています。
このようなケースでは、相続人がなく、遺産が宙に浮いた状態になっています。
もし、相続財産に対して、何らかの請求や手続きをする必要があれば家庭裁判所に相続財産を管理する人(相続財産清算人)を選任してもらい、この清算人を相手に手続を進めることになります。
3.相続財産清算人の選任する場合の問題点
このような清算人の申立をすることができるのは、「検察官」「債権者」「利害関係者」だけです。
相談者が亡くなった人の看護など行っていたのであれば「利害関係人」として申立てをすることは可能でしょう。
ただ、申立てをする際、裁判所に費用(予納金:大阪家裁の場合は約90万円)を予め収める必要がありますのでご注意ください。
4.特別縁故者として遺産をもらうことが可能かもしれない。
相続財産清算人は、遺産を集めて、被相続人の債務などがあれば返済します。
この手続きの中で、相続人でなくても、相談者が献身的に介護を行っていたなどの事情があれば遺産を分けてもらえる「特別縁故者」制度があります。
相談者としては、《私は特別縁故者になる》という申し出ができます。
裁判所が決定することですが、特別縁故者として財産をもらえるかもしれませんので、ぜひ、申し出をされるといいでしょう。
5.葬儀費用について
葬儀費用は、被相続人が亡くなった後に発生する費用であるため、法律上は亡くなった人の相続債務ではありません。
また、調停などの裁判手続では、喪主負担とされることが多くあります。
今回のケースで相続財産清算人が選任されていないのであれば、喪主が負担をするか、他の出席した親族にも負担してもらえないか話し合いをするほかありません。
一方、相続財産清算人が選任されている場合、相談者としては、相続財産清算人に対して立て替えた葬儀費用を請求することも考えられます。
相続財産清算人としては、相続財産から葬儀費用を支出するか検討し、裁判所の許可を取った上で支払いがなされる可能性があります。
もっとも、前述のとおり、相続財産清算人の選任には予納金が必要であり、葬儀費用よりも多くの予納金がかかる可能性がありますので、相続財産清算人を選任するかどうかは検討されたほうが良いでしょう。(弁護士 山本こずえ)