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実例Q&A

贈与額の調査方法【Q&A793】

2022年12月7日

【質問の要旨】

被相続人:父

相続人: 母、妹、相談者

その他:妹夫婦は、父と母の共有名義の土地(父の持分3/4、母の持分1/4)に3階建ての家を建て住んでいる。

    土地は使用貸借、建築費用の一部を父が負担した。

     ⇒「特別受益」にあたると考え、持ち戻しを請求したい。

建設費用:1階⇒父が負担(面積61.04㎡、鉄骨)※具体的な金額は不明

     2、3階⇒妹の自己資金(面積:2階33.53㎡、3階31.88㎡、木造)

 

・持ち戻しの請求の為の具体的な金額を求める方法はあるか。

・金額が分からないと持ち戻しの請求そのものが難しいのか。

 

 

 

【回答】

建築費用の額については、ネット上で、建物構造別(例えば《木造モルタル》に標準単価表がアップされています。(サイト:https://archi-book.com/news/detail/647)ので参考にされるといいでしょう。

 父は、預金口座から建築費用を妹又は建築業者の預金口座に送金した可能性があるので、父の預金口座の取引履歴を取得することで、もっと直接的に贈与額を明らかにできる可能性があります。この方法も試されるとよいでしょう。

 贈与があった事実自体を立証できるなら、贈与額を具体的に明らかにできなくても、特別受益の持ち戻し(贈与額を遺産に計算上加えて、各相続人の相続分を計算すること)を主張できます。

 土地の使用貸借(土地を無償で貸し借りすること)も、土地の持分権について使用貸借権(土地を無償で借りる権利)を贈与したものと考えることができるので、これも特別受益であると主張すべきです。

 被相続人は父、相続人は母と妹と私の3人です。妹夫妻は、父3/4、母が1/4という共有名義の土地に家を建てて住んでいます。土地は使用貸借で、妹が建てた家は三階建です。

その建築費用の一部を父が負担、援助しているので、その建築費用が「特別受益」にあたると考え、持ち戻しを請求したいと思っています。

私が主張する根拠にしているのは、「1階は、父に払ってもらっている」という、妹からのLINEです。ですが、父が負担した具体的な金額が分かりません。父が負担したという1階の広さは、61.04㎡で、鉄骨です。妹が自己資金で建てた2階は33.53㎡、3階は31.88㎡で木造です。建築費の相場を参考にするとか、請求するための具体的な金額を求める方法はないでしょうか。それとも金額がわからないと請求そのものができなくなるのでしょうか。よろしくお願いします

【ニックネーム】

 PC

【詳細な回答】

1 前提として

 家は妹名義で、妹夫妻のみが住んでいるものとします。

 遺言書はないものとします。

2 父による建築関連援助額を突き止める方法

⑴ 建築構造等から推定する方法

 インターネット上に、建築構造別、建築年度別、建築地域別の1坪当たりの建築費が公表されています

 (https://archi-book.com/news/detail/647)。

 こうしたデータを基にして、父が妹に贈与したおおよその建築費用を推定することができます。

⑵ 金融機関の取引履歴から推定する方法

 ⑴の方法より、もっと直接的に贈与金額を明らかにできる可能性のある方法があります。

 建築費用の一部であるとはいえ、高額であると推察されるので、父は預金口座から、妹の預金口座又は建築業者の預金口座に送金する方法により、あるいは、父の預金口座から出金して、現金を妹に手渡しする方法により、妹に贈与している可能性が高いと思われます。

 建築時期を参考にすれば、父による送金・出金時期はある程度検討がつくと思います。

 そして、父が送金・出金したであろう預金口座(銀行名と支店名が分かればよい)について心当たりがある場合は、その銀行のその支店に対し、送金・出金したであろう時期の取引履歴の開示を請求する方法があります(開示可能な期間は、銀行によって異なりますが、一般的には過去10年程度のようです)。

 その時期に、妹又は建築業者に対する大きな金額の送金履歴があるか、あるいは、大きな金額の出金があり、使途が不明のものがあれば、建築費用の贈与額である可能性があります。

 取引履歴の開示費用は、銀行によっても、開示対象の期間によっても異なりますが、数千円程度で収まるでしょう。

 なお、相談者は父の相続人なので、相談者は単独で、亡父の預金口座の取引履歴の開示を請求することができます。

3 金額が分からなくても特別受益の持ち戻しを主張できる

 たとえ、父による妹への建築費用の贈与金額が分からなくても、贈与があったことを主張・立証し、金額は相談者には不明であるが贈与額を特別受益として持ち戻すべき(贈与額を遺産に計算上加えて、各相続人の相続分を計算すべき)だと主張することはできます。

 相談者は、贈与があったことを主張・立証した上で、妹に対して、相続人間で遺産分割協議をする際に、あるいは、遺産分割調停をする際に、贈与額を明らかにするよう要求するとよいでしょう。

それでも妹が贈与額を明らかにしない場合でも、特別受益は0円にはなりません。

例えば調停であれば、交渉の過程である程度の金額に折り合うことも珍しくないようです。

4 土地の使用貸借も特別受益であると主張すべき

 妹は、土地のうち、父が有する4分の3の持分について、妹名義の家の敷地として無償で使用しています。

これは、父が妹に対し、土地の4分の3の持分について使用貸借権(土地を無償で使用できる権利)を贈与したものと考えられます。

すなわち、土地の持分についての使用貸借権の贈与も特別受益に当たりますので、持ち戻すように主張すべきです。

土地の使用貸借権の価額は、一般には更地価格の1~3割程度と言われています。

本件では、建物の1階部分が鉄骨造りの強固な建物であることを考慮し、2~3割程度が目安になると考えられます。

よって、父の土地持分の使用貸借権の価額は、土地全体の更地価格×3/4(持分割合)×0.3程度が目安となるでしょう。

(弁護士 武田和也)

 

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