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実例Q&A

遺産分割後に相続不動産から退去してもらうためには【Q&A769】

2022年7月13日

【質問の要旨】

・被相続人:母 相続人:父、姉、相談者

・自宅不動産は両親の共有(母90%、父10%)

・現在遺産分割調停中

・父の単独、もしくは相談者と共有で不動産を相続し、姉には家を出てもらいたい

・姉の持ち分がゼロでも家に居座るのではないかと危惧している

 

①相続発生から遺産分割成立まで、不動産に関する出費を姉にも支払わせていると

明渡請求訴訟等でこちらが不利になるのか否か諸説あり、請求するか迷っている

②姉に支払わせていると不利になる場合、母の遺産から全額支払うようにすればいいのか

③遺産分割成立後に、姉にスムーズに出て行ってもらうためにできることはあるか

④生活費を支払わせると不利になるというのが一般説のようだが、あっているか

 

 

 

【回答の要旨】

不動産に関する諸費用を姉が負担しても、訴訟などで不利になることはない

姉に対して固定資産税などの諸費用を請求するべきではない

遺産分割調停調書に記載するというのは一つ考えられる方法である

今回はお世話になります。

 

被相続人である母が数年前に亡くなり、父と姉と私の3人が相続人となりました。

相続財産である自宅不動産はもともと両親の共有で(母90%、父10%の持ち分割合)、母の生前から家族4人(相続発生後は3人)で同居しています。

 

現在、遺産分割調停中であり、姉の強欲さに私と父が対抗している形です。

父の単独か父と私の共有で自宅不動産を相続し、遺産分割後速やかに姉には家を出て行ってもらいたい(特に売却することになった場合)のですが、たとえ姉の持ち分がゼロになったとしても姉は嫌がらせの為に家に居座るのではないかと危惧しております。ちなみに、姉はほかにも家を持っています。

 

そこでご相談したいのは、

1.母の相続発生から遺産分割成立前までの不動産に関する出費である固定資産税/都市計画税、家の保険、修繕費等を姉にも支払わせていると、遺産分割後に姉の持ち分がゼロの状態になっても、明け渡し請求訴訟等でこちらに不利になる、出て行ってもらうのが難しくなるという説と、そのようなことはないという説があり、請求するべきかどうか迷っております。諸説理由があるのでしょうが、うちの場合はどちらなのでしょうか。

2.もし、姉に請求して姉分を支払わせると明け渡し請求訴訟等で不利になるというのなら、母の遺産の現金から全額を支払うようにすればいかがでしょうか。

実際には請求されたからといって姉が支払いに応じるわけはないので、この方法にならざるを得ないかと思います。(=結果的に法定相続割合での支払い)

3.遺産分割成立後に訴訟などに発展させずに姉にスムーズに家から出て行ってもらうために、何かできることはありますか?(例えば、遺産分割協議書に書く、使用貸借契約書を作成する等)

4.生活費(光熱費等)についてはこちらの不利になるという説が一般的なようなので、一切払わせておりませんが、この理解でよろしいでしょうか。

どうぞよろしくお願いいたします。

【ニックネーム】

ゆうこ

 

【回答】

相続が開始してから、遺産分割が終了するまでの間も、遺産である不動産に関する出費である固定資産税などの諸費用は、発生し続けます。

通常、これらの諸費用は、その不動産に居住する者が支払います。

本件のように、共同相続人が同居している場合には、代表相続人が支払うことが多いといえるでしょう。

今回のご相談は、これらの諸費用を先に支払っている相続人の側から、支払っていない相続人に対して、請求するべきかどうかというものです。

また、遺産分割が終了しても、相続人が居座る場合に、どのように出て行ってもらえばいいかということも、問題になっています。

1 不動産に関する諸費用を姉が負担しても、訴訟などで不利になることはありません。

そもそも、相続が開始してから遺産分割前までの間、不動産にかかる出費である、固定資産税などの租税、家の保険、修繕費用はだれが負担するべきなのでしょうか。

ここにはいくつかの考え方がありますが、訴訟になった場合のことを念頭におけば、法定相続分に従い、共同相続人の各人が負担するべきであるという考え方が有力です。

したがって、姉が自己の法定相続分に従って、これを支払ったとしても、訴訟において有利・不利にはなんら影響しません。

光熱費は、電気、ガス、水道等の使用に対する対価ですから、姉が使用した分について負担をしても、明渡訴訟等で、こちらが不利になることはないでしょう。

 

2 姉に対して固定資産税などの諸費用を請求するべきではありません。

そうであれば、姉に請求すればよいではないかと思われるかもしれません。

しかし、その必要はありません。

なぜなら、相談者は、現在、遺産分割調停を行っています。

調停で、これらの諸費用をだれがどのように負担するかが話し合われていることでしょう。

そして、調停が成立すれば、調停調書で決められた負担割合に応じて、清算されることになります。

本件では、母親には遺産としての現金があるようですので、姉が負担すべきであった費用については、母親の遺産である現金を分割する際に、その分割割合で調整すれば足ります。

調停では、自宅不動産を相談者の側で取得される方針とのことです。

そのことも含めて考えると、あえて姉が応じる見込みもない、不要な請求はするべきではないでしょう。

 

3 スムーズに自宅不動産から出て行ってもらうためできること

遺産分割が終了して、遺産である自宅不動産に対して、持ち分を持たなくなった相続人を、どのように立ち退かせるかが問題になっています。

明渡訴訟を提起するのも一つの方法ですが、これには労力がかかります。

そこで、相談者から、2つのアイデアを挙げていただきました。

遺産分割調停の調停調書に書き込む方法と、使用貸借契約書を作成する方法です(ご質問には、遺産分割協議書と書いてありましたが、すでに調停中ということですので、調停調書と読み替えました。)。

結論から申し上げますと、使用貸借契約を締結する方法は、姉が自宅不動産を使用することができる新たな権限を設定してしまうことになりますから、お勧めできません。   

他方で、遺産分割調停調書に記載する方法は、示唆に富むアイデアであり、ご検討されても良いでしょう。

遺産分割調停調書に記載する意義は、2つあります。

任意の立ち退きを促す効果

遺産分割調書に記載する内容は、通常、当事者双方がこの内容に従う旨を確認したうえで、合意の上に作成するものです。

したがって、調停調書に記載された事項について、任意の履行が期待できます。

強制執行ができるという効果

調停調書には、執行力と言って、強制執行できる効力があります。

ただ、遺産分割調停調書に基づき立ち退きの執行ができるかどうかは、あまり前例がなく、実務に定着している方法とは言えません。

遺産分割審判の抗告審において、明け渡しを認めた例があり(大阪高決平成15年4月15日家月55巻12号61頁等)、強制執行ができるかどうかは、これらの裁判例をもとに、裁判所とも協議をする必要もあるでしょう。

場合によっては、審判書に書き込むよう、裁判所を促していってもよいでしょう。

(弁護士 岡本英樹)

 

 

 

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