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実例Q&A

遺留分算定の基礎となる財産の範囲と認知症【Q&A770】

2022年7月14日

【質問の要旨】

・父が亡くなり、弟が遺言執行人に指定された

・相続人は母、相談者、弟

・母は認知症を患っている

・遺言書の内容は不動産、預金などほぼすべてを弟に譲るというもの

・父が亡くなる前に、現金2000万円も弟に贈与

・車購入費として100万円などここ2年ほど多額の現金を与えていた

・遺産目録などはまだ作成していない

 

①父が生前弟に贈与した現金を相続財産に加算した上で、遺留分を請求することは可能か

②母は自分で遺留分請求ができないと思うが、どうしたらいいか

 

 

 

【回答の要旨】

死亡する前10年間の贈与は、遺留分算定の基礎となる財産に加算される

認知症の診察を行い、度合いによっては、成年後見人を選任する必要がある

父が先日なくなり、相続人の一人である弟が遺産執行人に指定され、内容も不動産、預金など、ほぼ全てを弟一人に譲るというものでした。

母と私も相続人ですが、弟は全部自分のものだと言い張っています。

また父は亡くなる少し前に金庫にしまってあった現金2000万円も弟に贈与、1年前には車購入費用として100万、などちょくちょくここ2年ほどの間に弟に多額の現金を与えていました。

これらの現金も相続財産に加算した上、遺留分を請求することは可能でしょうか?

執行人の弟は、まだ遺産目録などを作成していない上、隠している財産もあるのではと思います。預金通帳など。

ただ、母が認知を患っており、遺留分請求など自分でできないと思うのですが、どうしたらよいでしょうか?このまま全て弟に全部取られるのは納得いきません。

【ニックネーム】

フルムリ

 

【回答】

1 父が死亡する前10年間の贈与は、遺留分算定の基礎となる財産に加算されます

被相続人が生前、相続人に対して、生計の資本などとして贈与を行った場合、被相続人が亡くなる10年前までの贈与については、相続人間の公平を図るため、遺留分の計算に当たっては、考慮されます。

具体的には、これらの贈与は、遺留分の基礎となる財産(以下、基礎となる財産といいます)に加算され、債務を控除したうえで、各人の遺留分率に従い、遺留分が決まります。

本件を以下の通り仮定して、説明しましょう。

<相続人は母と相談者と弟のみ、父親の遺産は500万円の預金と500万円の不動産、債務なし>

母の遺留分率は4分の1、相談者の遺留分率は8分の1です。

かりに、500万円の預金と500万円の不動産(併せて1000万円の遺産)だけを考慮すれば、母の遺留分額は250万円、相談者の遺留分額は125万円になります。

しかし、父が亡くなる10年以内に、父から弟へ合計2100万円の贈与が存在します(うち、2000万円については、後々、金庫の中にしまってあったかどうかが争われることがありますので、取り出された際の記録は残しておくべきでしょう。)。

基礎となる財産に加算するべき贈与は広い意味で、生計の基礎として役立つような贈与の一切が含まれます。

したがって、2000万円の贈与のみならず、100万円の車購入費用も、基礎となる財産に加算するべき贈与と認められるでしょう。

それゆえ、これらの贈与は加算され、債務はないので、3100万円が基礎となる財産になります。

これに、各人の遺留分率を乗じ、母親の遺留分は775万円、相談者の遺留分は387万5千円となります。

 

2 認知の度合いによっては、成年後見人を選任する必要があります

本件では、母親が認知症を患っているようです。

はじめに法律上の説明をした後に、今何をする必要があるかを説明したいと思います。

(1)法律上の説明

遺留分の請求は、通常、遺留分の権利者から侵害者に対して、内容証明郵便等の書面を送付することで、行います。

遺留分を請求するためには、請求者に意思能力がなければできません。

意思能力とは、自己の行為とその結果の意味を理解する能力です。

法律上、意思能力がないとなれば、その者がした法律行為は無効となります。

認知症が深刻な場合には、意思能力がないと判断される可能性があります。

遺留分の請求も法律行為ですから、母親に意思能力がなければ、その行為は無効になってしまいます。

この場合には、母親の法律行為を代理する権限を有する成年後見人を選任する必要があります。

意思能力があるかないかは、医学的な診断をもとに裁判所が判断します。

(2)今、何をする必要があるか

本件ではまず、母親の認知症の診察を行うことが必要です。

認知症の診察では、長谷川式スケール又はMMSEという手法により、認知症の症状が数値化されます。

これらの数値と意思能力の判断が一致する訳ではありませんが、裁判所に対する成年後見人の申立てが認められるかどうかについて、ある程度予測をすることができます。

かりに、認知症が深刻である場合には、家庭裁判所に対して、成年後見人選任の申立てを行う必要があります。

たとえ、意思能力に問題がなくても、遺留分の請求を行う書面には、通常、遺留分の請求をするとしか、記載しないことが多いです。

したがって、具体的な金額の算定や交渉、となると、専門家でなければ困難な部分が多いでしょう。

遺留分の請求は、遺留分があることを知ってから1年以内に行わなければ、時効によって請求そのものができなくなってしまいます。

本件では、母親の意思能力が問題となっていますので、早めの対策が必要です。

また、相談者は、遺言執行者である弟による遺産隠しを懸念されているようです。

この場合には、財産調査が必要になる可能性があります。

また、必要に応じて遺言執行者を解任する手続きもあります。

一年という期間制限も踏まえ、なるべく早期に、弁護士に相談されることをお勧めいたします。

(弁護士 岡本英樹)

 

 

 

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