【題名】
リゾート会員権(共有持分)の破棄・返却について
【ご質問内容】
お世話になります。
35年ほど前に、両親が会員になったD社の会員権の破棄について、ご相談したいです。
両親の名前で(父は死去してますが、名義は変更していません)登録されている鎌倉のホテルの「所有権」(共有持分)を、破棄、もしくはⅮ社へ譲渡・返却したいと考えております。
2年ほど前に、D社側から電話があり、「所有権なので相続は続いていき、(私の)兄弟やそのお子さんの代になっても続いていくので、今なら新たな会員権(年会費3万円×3年で解約可能になる)を100万円で購入して切り替えることができます、と持ちかけられました。(その後は、会員権をⅮ社側が買ってくれるという流れらしいです)
さらに、先ほども電話がかかってきて、上記の内容(営業?)を勧められました。
「また、大規模修繕についても、所有者の1/4の賛同が得られれば皆さんに負担いただくことになります」という脅しのようなことも言われました。
そもそも「所有者の1/4賛同でok」はいつから1/4になったのか?を聞いたのですが、
「理事会で決定して『1/4の賛同でok』に変更された」、とも言われたのですが、その理事会が開かれていたことなども把握していません、、、
最近のD社は、このようにどんどん規約の改訂などを進めてしまっていて、悪どく会員権ビジネスを広げていることもあり、一度弁護士の先生に相談しようと思いました。
私は「所有権」(共有持分)の破棄・返却が希望ですが、きっと同様のお考えのオーナーの方は多いと思うので、一緒に解決できれば幸いだと思っています。
いくつか法律事務所の会員権破棄の事例を拝見しているのですが、貴殿の事務所様は成功事例があるようでしたので、ご相談する場合、予算感や流れをお伺いできますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
F
【ニックネーム】
A.F
【回答】
1. リゾート会員権の人気がなく、手放したい人が多くなっている。
今から40年ほど前にはリゾートホテルは人気がありました。
(なお、当事務所のリゾートホテルHPのブログをご参照ください:https://www.osawalaw.net/)
しかし、今では各地に本格的なホテルが新築され、リゾートホテルを利用する人は少なくなりました。
一方でリゾート会員権をお持ちの方が高齢化したため、ホテルを利用しないのに毎年の会費や持分の固定資産税を支払続けることも多くなりました。
2.相続のときに問題となることも多い。
会員であったご両親が死亡された場合、リゾート会員権は遺産として相続されますが、利用もしないまま年会費や固定資産税を支払わなければならず、マイナスの遺産になっています。
当事務所が相談を受けるリゾート会員権問題の多くが、自分の子供にはこのような負担をさせたくないので解約したいという、相続がらみのものです。
3.大規模修繕の決議要件は緩和できない。
リゾートホテルの多くは、今、建築時期から約40年ほどが経過し、その多くが老朽化し、大規模修繕の時期を迎えています。
今回の相談では、「大規模修繕についても、所有者の4分の1の賛同が得られれば、皆さんに費用を負担いただくことになります」という話があったようですが、そのような説明は間違いです。
まず、規約変更は理事会ではできず、総会の決議でしかできません。
次に、大規模修繕の決議については、法律(区分所有法)で区分所有者の数及び議決権の4分の3の決議が必要と定められています。
なお、この4分の3の要件を軽くするような規約を変更はできないと考えられています。
4.リゾート会員契約を解約する方法は?
リゾート会員契約はリゾートを運営している会社との契約ですので、年会費の支払を止めるには、その会社との契約を解消する必要があります。
しかし、会員が解約を申し出ても多くの会社が《解約はできません》と主張します。
それならどうしたらいいのですかと質問すると、《譲渡されるしかありませんね》と回答され、結局、解約できないままに年会費等の支払は続けざるをえないというのが実情のようです。
もし、解約をしたいというのであれば、弁護士に依頼し、本格的な解約交渉をしてもらうといいでしょう。
5.解決までの流れ及び弁護士費用等
1)まず、法律相談をする。
法律相談をお申込いただければ、このQ&Aでは紹介できない具体的な説明をさせていただき、解決の方針等もお伝えします。
なお、遠隔地の方については、Zoomでの相談も可能です。
2)事件受任後はすべて弁護士が対応する。
事件を受任した後は、リゾート会社や管理組合との交渉はすべて弁護士が担当します。
依頼者の方がリゾートホテル会社等と交渉や連絡する必要はありません。
3)解決までにどの程度の期間がかかるか。
当事務所のこれまでの案件では、これまでに解決した全案件の平均期間は、解約の合意書調印まで5ケ月弱、持分移転登記完了までで均6ケ月強、かかっていますが、最長で約1年2ケ月程度かかった案件もあります。
4)弁護士費用
弁護士費用(以下、税別で記載しています)は、事件の依頼をいただく時に20万円、解約合意書調印時に40万円、持分移転登記時に5万円の合計65万円です。
その他の費用としては、調査費用など実費が必要になる場合がありますが、これまでに解決した案件で実費が1万円を超したケースはありません。
5)これまでに訴訟まで行ったケースはない。
これまでは全件を話し合いで解決をしてきました。
しかし、場合によっては、訴訟をして法廷で争う場合もありえます。
その場合でも弁護士費用の追加は不要です。
6.最近のD社の動きと問題点について
今回の相談には、D社は《一時金の支払いをすれば、より負担の軽い会員に移行することができる》という勧誘をしていると記載されています。
実はこの会社についての相談扱い件数が最も多いです。
さて、この勧誘には次のような問題があります。
① 請求される一時金が高額である。
これまでの依頼者の方から聞き取った話では、その一時金が100万円であったり、200万円であったり、極めて高額です(不思議なことに担当者により金額が異なりますし、この金額が時期により変動することもあるようです)。
② 会員資格は継続する。
一時金を支払った段階でも、会員でなくなるわけではなく、その後も(年会費は少なくなりますが)年会費の支払は必要です。
7. D社との交渉状況
今回の相談の会社であるD社については、当事務所はこれまでに12件を受任し、そのうち10件が解決済みであり、残り2件が交渉中です。
なお、解決に要した期間は解約合意書調印までで平均約4ケ月です。
(弁護士 大澤 龍司)