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実例Q&A

二世帯住宅に被相続人と同居していた相続人の特別受益と寄与分【Q&A825】

2023年7月26日

【質問の要旨】

今回の質問を次のとおり整理しました(異なっておればご容赦ください)。

 1.2世帯住宅の建築

  ・両親が土地を持っている。

  ・その土地の上に.両親と兄が共有で2世帯住宅を建築した。

  ・代金2800万円のうち、手付金300万円は兄が支払った。

  ・両親だけが当該住宅ローンを支払ってきた。

 2.固定資産税

  ・固定資産税は両親が全額支払った。

 3.開業資金等

  ・兄が薬局を開業の際に、両親が兄に600万円を贈与した。また、その後の開業資金のローン返済額と店舗賃料等にかかる約4万円/月を親から贈与してもらっていた疑いがある。

 4.リフォーム費用

  ・二世帯住宅のリフォーム費用約250万円を両親が支払った。

 5.兄から両親への支払

  ・兄は、両親に4万円/月を支払っていた。

以上の前提で、兄の特別受益が認められるか。

 

 

 

【回答】

1 特別受益

 (1)特別受益とは

   特別受益とは、相続人が生前に被相続人(死亡された人)から財産をもらったときに、遺産分けの際にその分を遺産に加える制度です。

 (2)二世帯住宅建築費用について

   兄が建物を共有で取得したのに、その分の代金の支払いをしない場合には、兄はその分を両親からもらったとして、

   ①そのもらった分を遺産に組み入れる。

   ②その生前もらった分を遺産分けしてもらったとして、遺産分割を進めるということになります。

   そのため、兄が建物が2分の1の持分を取得したのなら、兄は建築代金2800万円の半額の1400万円を負担するべきであったのに、その負担をしなかった分だけ、両親から贈与あるいは立替払いをしてもらったことになります。

   兄が300万円の手付金を支払っているのなら、これを除外した1100万円が兄の特別受益になります。

 (3)固定資産税について

   建物の固定資産税は持分に応じて負担する必要があります。

   もし両親が全額を負担したのであれば、兄が本来負担すべき額について、両親が兄に贈与等したものと考えられ、特別受益になります。

 (4)開業資金や店舗賃料等について

   両親から兄に対する開業資金や店舗賃料等の金銭交付があったのなら、その分も特別受益になります。

 (5)リフォーム費用について

   二世帯住宅のリフォーム費用のうち、建物全体のリフォームなら兄も持分に応じて負担する必要があります。

   もし、両親が全額負担したのなら、兄は負担分だけ、特別受益を受けたということになります。

   ただ、両親の利用部分だけといえば、その分については兄の負担分はなく、特別受益に該当しません。

2 寄与分

 (1)寄与分とは

   寄与分の制度とは、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした相続人について、遺産分割の際に取得財産を増やすという制度です。

 (2)介護について

   兄の介護によって、両親の財産の減少を抑えることができたと考えられますので、兄には一定額の寄与分が認められる可能性が高いでしょう。

 (3)兄が両親に渡していた4万円/月について

   もし、兄が両親に渡していた4万円/月が、両親に料理を作ってもらう対価である場合は、寄与分には当たりません。

   しかし、そのような事情がない場合には、両親の財産を増加させる行為ですので、寄与分に当たるでしょう。

 

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