【質問の要旨】
今回の質問を次のとおり整理しました(異なっておればご容赦ください)。
1.2世帯住宅の建築
・両親が土地を持っている。
・その土地の上に.両親と兄が共有で2世帯住宅を建築した。
・代金2800万円のうち、手付金300万円は兄が支払った。
・両親だけが当該住宅ローンを支払ってきた。
2.固定資産税
・固定資産税は両親が全額支払った。
3.開業資金等
・兄が薬局を開業の際に、両親が兄に600万円を贈与した。また、その後の開業資金のローン返済額と店舗賃料等にかかる約4万円/月を親から贈与してもらっていた疑いがある。
4.リフォーム費用
・二世帯住宅のリフォーム費用約250万円を両親が支払った。
5.兄から両親への支払
・兄は、両親に4万円/月を支払っていた。
以上の前提で、兄の特別受益が認められるか。
【回答】
1 特別受益
(1)特別受益とは
特別受益とは、相続人が生前に被相続人(死亡された人)から財産をもらったときに、遺産分けの際にその分を遺産に加える制度です。
(2)二世帯住宅建築費用について
兄が建物を共有で取得したのに、その分の代金の支払いをしない場合には、兄はその分を両親からもらったとして、
①そのもらった分を遺産に組み入れる。
②その生前もらった分を遺産分けしてもらったとして、遺産分割を進めるということになります。
そのため、兄が建物が2分の1の持分を取得したのなら、兄は建築代金2800万円の半額の1400万円を負担するべきであったのに、その負担をしなかった分だけ、両親から贈与あるいは立替払いをしてもらったことになります。
兄が300万円の手付金を支払っているのなら、これを除外した1100万円が兄の特別受益になります。
(3)固定資産税について
建物の固定資産税は持分に応じて負担する必要があります。
もし両親が全額を負担したのであれば、兄が本来負担すべき額について、両親が兄に贈与等したものと考えられ、特別受益になります。
(4)開業資金や店舗賃料等について
両親から兄に対する開業資金や店舗賃料等の金銭交付があったのなら、その分も特別受益になります。
(5)リフォーム費用について
二世帯住宅のリフォーム費用のうち、建物全体のリフォームなら兄も持分に応じて負担する必要があります。
もし、両親が全額負担したのなら、兄は負担分だけ、特別受益を受けたということになります。
ただ、両親の利用部分だけといえば、その分については兄の負担分はなく、特別受益に該当しません。
2 寄与分
(1)寄与分とは
寄与分の制度とは、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした相続人について、遺産分割の際に取得財産を増やすという制度です。
(2)介護について
兄の介護によって、両親の財産の減少を抑えることができたと考えられますので、兄には一定額の寄与分が認められる可能性が高いでしょう。
(3)兄が両親に渡していた4万円/月について
もし、兄が両親に渡していた4万円/月が、両親に料理を作ってもらう対価である場合は、寄与分には当たりません。
しかし、そのような事情がない場合には、両親の財産を増加させる行為ですので、寄与分に当たるでしょう。
■タイトル
財産分与で揉めてます。
■ご質問内容
宜しくお願い致します。
母親は粗動けないリハビリ要するに人でした、
両親が亡くなり、
2兄弟での財産分与で揉めてます。
兄が母屋、薬局開店資金未払い、
以下の
文書になります。
母屋未払い。
母屋 2世帯住宅2800万円しました。
兄は、親の光熱費いくらも負担していなく、固定資産税払ってない固定資産税から2世帯住宅だと半分でも年12万×で20年間で240万円特別受益でないですか?
現時点で残金があるので今までの家賃相当分を計算して加算しないとなると、
2800÷2−300(手付金の領収書が兄の名前である)=1100万円は払ってない、2LDk相場が10.5万円の7割分の未支払なので7万×12ヶ月×20=年特別受益ですか?
10年前に自分に、親から残金を払ってもらうように言ってくれと言われて、数日後どうなったか聞いたら所、もう済んだからいい、兄にこれからもお世話になるからねと残念そうに答えた。
300万円の手付金の領収書はあったが、
1100万円が10年払って無く全額払ったと
言っている。
10年以上も払って無く、立場上世話をするのだから払えはと言われたからと払うとは思えないし、
自分は家を親から一銭も贈与を貰って無く建てた。
兄は残金の1100万円が特別受益として加算される。
300万円以上の証明する物が無いので、
払ってたかは通帳とか見せてもらえば分かると思うがが調停しないと開示しないと言っている。
薬局開店資金
31才の人が都市銀行等から借りられないし父親と一緒に違う所で借りに行ったとの事だが、担保ない、父も自営業で借りられない。実績もないので借りれない。
自分は兄に紹介されて薬局卸会社に勤めてて、
配送とかもあり、独立心があって、店の店長に話を伺ったりしたら少なくとも2000〜2500万円は開店資金が必要との事でした。
閉店の約2年前から店に2ヶ月に1.2回顔を見せて、自分は薬局店のホームページを作り 紹介をしてたりした。
店には全くお客が来ていませんでした、
聞いたら
近くの団地から人が退去していてお客が極端に少なくなつているとの事でした。
住まいのアパート代、店舗の家賃代、開店資金ローン返済と、月々約40万掛かります、
この様に売上減少で赤字なので収入が無く親の贈与なくして月々支払える訳がない。
自分は400万円.親からは600万円
振込があります。ので
1000万円の贈与があります。
自分もその後 店舗を借りて事業をしたが、
親からは一銭も援助を受けていない。
証拠はないが自分は三菱銀行
(現:三菱UFJ銀行)で400万円降ろした(親から600万円貸したと聞いています)窓口の女性に大金だからか理由を、何の目的で降ろすのかを聞かれたので(兄弟の事で必要になり降ろしますと答えた)
後で兄からボールペン等を貰った。
財産分与の話し合いをしたら「知らない」との一点張りでした。
なので1000万円の特別受益があります。
家の改築費用、
キッチンカウンター、風呂釜、トイレタンク、
トイレドア、排水口、外の水道管、蛇口交換、
玄関ドア、台所床板交換、畳交換、換気扇取付、壁塗替、柱塗替、約250万円
ネズミが突然出て来るので穴埋め修理、
固定資産税12万円×20年=240万円
3週間〜8週間に1.2回実家に帰っていた
その時月4万円払っていました。が
払ってなくても特別受益に値しないですか?
■ニックネーム
たかしろ
【回答の詳細】
1 特別受益
(1)特別受益とは
プラスの遺産としては、二世帯住宅があり、マイナスの遺産としては、住宅ローン残金があります。
遺産分割においては、これらを兄と相談者で1/2ずつに分けることが基本になりますが、生前に兄が両親から贈与を受けていたり、逆に兄が母の介護をして、両親の財産の維持に貢献していた等の事情もあるようですので、それらの事情を考慮して修正されることになります。
まずは、特別受益について検討してみます。
特別受益の持ち戻しとは、共同相続人の中に、被相続人から生前贈与等を受けた者がいる場合に、その生前贈与等の額(これを「特別受益」といいます。)を遺産に計算上加えて、遺産分割をすることで、相続人間の公平を実現する制度になります。
(2)二世帯住宅建築費用について
二世帯住宅建築時に、兄が2800万円の二世帯住宅の持分1/2を取得したにもかかわらず、300万円しか負担せず、残りは両親が住宅ローンを組んで負担したということですから、二世帯住宅購入時に、両親から兄に対し、1100万円が贈与されたか、貸し付けられたということになると考えられます。
10年前に兄が1100万円を両親に支払ったのが真実であれば、この1100万円については特別受益になりませんが、この事実は兄が立証する必要があります。
兄が立証できない場合は、1100万円が贈与である場合には、遺産に加えた上で、遺産分割がなされることになります。
1100万円が貸金である場合には、遺産分割を待たずに、相続開始時に、その1/2の額の債権を相談者が相続し、兄に請求できるという帰結になります。
(3)固定資産税について
二世帯住宅の持分1/2は兄が有しているのであれば、二世帯住宅全体にかかる固定資産税の半額は、兄が本来負担すべきといえます。
それにもかかわらず、両親が固定資産税の全額を負担したのであれば、兄が本来負担すべき額の総額について、両親が兄に贈与したものと考えられ、これは特別受益になります。
(4)開業資金や店舗賃料等について
両親は、兄に対し、兄の開業時に600万円を、それ以降も、開業資金のローン返済額や店舗賃料等として約40万円/月を贈与していた疑いがあるようです。
両親から兄に対する、上記額の金銭交付があったことを相談者が証拠で立証する必要があるでしょう。
それが証明できれば、贈与か貸金であることが認定される可能性が高いでしょう。
なお、相談者は、兄に対し、兄の開業時に400万円を贈与したようですが、それによって両親の遺産が減ったわけではないので、この400万円は特別受益にはなりません。
(5)リフォーム費用について
二世帯住宅の様々な箇所をリフォームされ、その費用は全額両親が払ったようです。
各リフォーム項目のうち、専ら兄の利益になっているものについては、贈与といえるでしょう。
しかし、専ら両親の利益になっているものについては、兄への贈与とは認められません。
双方が利益を受けているものについては、受益割合に応じて費用の一部についてのみ贈与と認められることになるのではないかと思われます。
なお、リフォーム費用を両親が支払ったことを相談者が立証する必要もあります。
2 寄与分
(1)寄与分とは
寄与分の制度とは、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした相続人について、遺産分割の際に取得財産を増やすという制度です。
(2)介護について
兄の介護によって、両親の財産の減少を抑えることができたと考えられますので、兄には一定額の寄与分が認められる可能性が高いでしょう。
(3)兄が両親に渡していた4万円/月について
兄が両親の手料理を自宅で食べることが多かったり、兄の居住スペースの掃除を両親がすることが多かったりした場合は、兄が両親に渡していた4万円/月は、その対価であるとも考えられるため、寄与分には当たらないでしょう。
しかし、そのような事情がない場合には、両親の財産を増加させる行為ですので、寄与分に当たるでしょう。
(弁護士 武田和也)
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