【質問の要旨】
・被相続人:祖父
・相続人:祖母(認知症で会話不能)、父(又は母)
・遺言の有無:不明(少なくとも相談者名義の預金を相談者に遺贈する旨の記載はない)
・祖父の手紙に、孫である相談者名義の預金をしていると思われる記載があるが、通帳等は所在不明。預金を祖父、祖母のどちらが行ったのかも不明。どう対応すればよいか。
【題名】
名義預金について
【ご質問内容】
数年前に亡くなった祖父の手紙が最近見つかりました。その中に孫である私に対し名義預金をしていると思われる記載がありました。預金をしているというような話は以前に聞いていましたが、通帳、印鑑、証書などは預かっておらず(探しましたが全て現在行方不明)、また貯金を祖父また祖母のどちらが行ったのかも不明です。祖母は数年前より痴呆が進み、話がわかる状況ではありません。このような場合、どう対応していけば良いでしょうか。ご回答お願い致します。
【ニックネーム】
mm
【回答】
1 名義預金の探し方
名義預金とは、実際のお金の持ち主とは違う人の名義で預けられている預金のことをいいます。
預金口座の名義人は相談者ですので、相談者が金融機関に対して、自分の名義の預金口座がいくつあるのかにつき、その残高などの照会をすることも可能と思われますので、その手配をし、預金の明細を確認するといいでしょう。
ただ、どの金融機関に照会するかが問題になります。
これまで経験から言えば、ゆうちょ銀行は第一の調査対象です。
次に祖父が地方に住んでいたのなら農協は外せないでしょう。
その他、祖父の住所の近くの金融機関も照会先にするといいでしょう。
なお、預金があることがわかれば、過去の取引履歴も念のためにもらっておくといいでしょう。
この他、祖父、祖母以外に名義預金についての事情を知っている人がいれば聞いたり、祖父の行動パターンから金融機関にある程度の目星をつけて照会をするのもよいでしょう。
2 名義預金は原則、名義人ではなく預金者のもの
孫である相談者名義の預金を相談者が取得できるのではないかとお考えになってのご相談だと思われますが、注意すべきことがあります。
祖父が孫である相談者名義の預金口座を開設し、孫に一度も預金口座を利用させることもなく、通帳やキャッシュカード、印鑑も祖父が保管していた場合、名義は相談者になっていても、その預金は祖父のものだと考えられます。
相談者からの照会に応じてくれても、名義人に過ぎない相談者の解約や払い戻しに応じてくれない場合もありうるということを理解しておくといいでしょう。
3 特段の事情がない限り、名義預金は生前贈与でも遺贈でもない
2項冒頭に記載したような事情がある場合、名義預金は、単に預金者の名前を借りただけだと考えられます。
祖父の手紙が誰に宛てられた手紙で、どのようなことが書かれていたのか分かりませんが、祖父が将来的に相談者に名義預金を渡すことを考えている旨示唆する内容であったとしても、相談者が受贈の意思表示(贈与してもらう人が受け取る意思を表すこと)をしていなければ、贈与には当たりません。
また、遺言書の有無が分かりませんが、少なくとも相談者名義の預金を相談者に遺贈(被相続人が死亡したら贈与をするとの意思を表すこと)する旨の記載はないようですので、遺贈によって取得することもできません。
4 名義預金は相続人が取得する
相談者名義の預金は祖父の遺産である以上、相続人である祖母及び父(又は母)が取得することになります。
しかも、祖母の認知症が進んでいる状態では、相談者に贈与することもできません。
祖母に成年後見人をつけたとしても、成年後見人が贈与することもまずありません。
ただし、相続人の反対がないのであれば、事実上、当初から名義預金が相談者のものだったとして取り扱うことも可能かもしれません。
(弁護士 武田和也)