【質問の要旨】
・被相続人は母、相続人は子3人。遺言書2通。
・裁判の結果、相談者は相続財産の現金4,200万円のうち、遺留分700万円を取得できる
・使い込まれた3,000万円の現金があり、1/6の500万円について請求を主張したい。
・3,000万円を相続財産に算入して、遺留分として請求するのが正しいか?
【回答の要旨】
・不当利得返還請求権は誰のものか
・3000万円の使い込み分も含めて遺留分侵害額請求をする
【ご質問内容】
よろしくお願いします。
被相続人母、相続人子3人ですが、元々遺言書2通、使い込み3千万円という大混乱の相続で、裁判の結果、私には遺留分侵害請求権だけが残りました。
よくわからないのですが、残った財産は現金4200万円だけで単純な計算では遺留分700万円を取得できますが、使い込まれた3千万円の6分の500万円について、どのような請求ができるでようか。
独り占めを画策した現金隠しなので、ぜひ主張したいと思います。
相続財産に算入して、遺留分として請求するのが正しいと思いたいのですが、それでよろしいでしょうか。
(田舎のババ)
※敬称略とさせていただきます。
【回答】
【不当利得返還請求権は誰のものか】
ご質問によると、相続人の一人が母の口座から、3000万円もの使い込みをしていたとのことです。
母の意思によらずに相続人の一人が行った使い込みについては、母はその相続人に対して、3000万円の不当利得返還請求権を有していたということになります。
そうすると、母の死亡により、上記返還請求権を誰が相続したのかが問題となりますが、これは、遺言書の内容によって異なります。
遺言書の中で、相続人の一人が母の財産を相続することになっているのであれば、返還請求権は「債権」という財産であり、被相続人の遺産の一つですので、その相続人が上記返還請求権を相続することになってしまいます。
そのため、あなたとしては、遺留分侵害額請求をし、その遺留分の限度で不当利得返還請求ができるということになります。
【3000万円の使い込み分も含めて遺留分侵害額請求をする】
前項のとおり、不当利得返還請求権という債権も被相続人の遺産だということになりますので、あなたの請求できる遺留分額もその分増えます。
《計算式》
遺留分計算の基礎となる遺産額:
現金4200万円+不当利得返還請求権3000万円
=7200万円
あなたの遺留分額:
7200万円×3分の1(法定相続分)×2分の1
=1200万円
以上のとおり、あなたは相続人の一人に対して、1200万円を、遺留分として請求できることになります。
(弁護士 岡井理紗)