【質問の要旨】
現状:競売手続き中
・所有者が亡くなった場合、相続完了まで競売は止まるか
【回答】
不動産競売には、強制執行手続きとしての競売と、担保権実行としての競売があります。
いずれの場合も、競売が開始された後は、債務者又は所有者が死亡しても手続きが止まることはありません。
したがって、遺産分割協議が終了する等、相続が完了するまで競売が止まることはありません。
ただ、競売手続では、裁判所から債務者らに進行具合の通知などを行います。
そのため、通知などが届かなかったときには、手続きが一旦停止します。
これも競売を申し立てた債権者が相続人の住所を調べ、裁判所から通知ができるようになれば、一旦停止した競売手続きは再び進行し始めます。
競売手続き中に、所有者がなくなった場合は、競売自体は相続完了まで止まりますか?
【ニックネーム】
困ったちゃん
【詳細な回答】
第1 競売の種類
不動産に対する競売には、強制執行手続きとしての競売と、担保権実行としての競売の2種類があります。
強制執行手続きとしての競売とは、金銭債権を回収するために、不動産を弁済原資とする手続きです。
担保権実行としての競売も、金銭債権の回収を目的とするものですが、あらかじめ不動産に対して抵当権などの担保権を持っている人が、優先的に弁済を得るために行うことができる手続きです。
第2 受継の手続きはいらない
民事訴訟においては、訴訟が係属した後に当事者が死亡した場合には、訴訟が中断し、相続人に手続きを引き継ぐための法的手続きとります。
これを、受継の申し立てといいます。
しかし、競売手続きにおいては、法令及び解釈によって、このような手続きをする必要がないとされています。
したがって、受継の手続きは必要ありません。
このため、遺産分割協議が終了する等、相続が完了するまで競売が止まることはありません。
第3 相続人に通知や送達をするために手続きが止まります
競売の手続きを進めるうえで、債務者又は所有者に対して、執行裁判所から書類の送達や種々の通知を行う必要があります。
かかる送達又は通知については、債務者又は所有者の相続人に行わなければなりません。
したがって、債務者又は所有者が死亡した場合には、競売手続きを継続するために、債権者は裁判所に対して債務者又は所有者の戸籍謄本を提出して、相続人を明確に知らせる必要があります。
裁判所が、相続人を把握することができるまでは、競売の手続きは一旦停止することになるでしょう。
(弁護士 岡本英樹)