【題名】
再転相続による相続放棄は相続人全員でしないといけないか
【ご質問内容】
亡父の弟(おじ)の相続放棄についてです。父が死亡する前におじが亡くなっています。その相続人は父を含む兄弟数人です。父は相続の承認も
放棄もせずに亡くなりました。父の相続人は息子の私と私の亡くなった弟の代襲相続人の甥の二人です。父の弟(おじ)の相続放棄申述は甥と共
にしないといけませか。私単独では無理ですか。ご教示お願い致します。
【ニックネーム】
tm
【回答】
今回の質問は、相続放棄は各相続人が独自にできるのかという点ですが、質問の中に《再転相続》と記載されていますので、この点も説明しておきます。
1.再転相続とは?
1)叔父の相続放棄問題
今回のケースでは、叔父が死亡(第1の相続)し、相談者の父が相続人です。
相続人である相談者の父は3ヶ月以内(この期間を熟慮期間といいます)に相続放棄であれば相続放棄ができます。
2)父の相続放棄問題
しかし、この熟慮期間を経過する前に父が死亡した(第2の相続)とき、父の相続人は父の遺産について相続放棄をすることができますし、叔父の遺産についても相続放棄ができます。
3)再転相続とは・・
第一の相続人が熟慮期間終了前に死亡して、新たに相続が発生することを再転相続といいます。
4)2つの相続放棄の関係
上記1)及び2)のケースでは、新たに父の相続人になった相談者らは、次の①及び②のいずれについても相続放棄をすることができます。
①叔父の遺産を相続放棄してもよい。(この場合の熟慮期間は、父の死亡を知ってから3ケ月以内になります)
②父の相続放棄をしてもよい。
5)具体的な対応
①叔父さんには借財(負債)が多く、父には借財がないというような場合であれば、相談者としては叔父の遺産については相続放棄、父の遺産は単純
に相続するということでいいでしょう。
②次に、叔父さんに借財が多く、父にも借財が多いというような場合であれば、相談者としては父の遺産について相続放棄をすればよく、叔父の遺産
についての相続放棄はあえてする必要はありません。(叔父の遺産は父の遺産に含みこまれるために、敢えて別途、叔父の遺産の放棄をする実益
はありません)
③叔父には借財はないが、父には借財が多いというような場合であれば、叔父から父に相続される遺産と父の遺産とを合算し、借財がどの程度ある
かを見極めた上で、相続放棄をするかどうかを考えましょう。なお、放棄の必要があれば父の遺産放棄をするだけでいいでしょう。
6) 相続放棄は単独でできる
①各相続人毎に放棄ができる。
相続放棄は各相続人がそれぞれの判断で申立てをすることができます。
そのため、長男は相続放棄をするが、次男はしないという対応も可能です。
全員が同時に相続放棄をする必要はありませんので、相談者と甥と共同で相続放棄をする必要はありません。
②相続案件ごとに放棄ができる
又、各相続人は、叔父さんの分は放棄するが、お父さんの遺産は放棄しない、という相続案件ごと に異なった対応をすることも可能です。
なお、各人がそれぞれ放棄をするか否かを考えることができるため、遺産に借財が多いかどうかが微 妙なケースでは、相続人のうちの一人を
除いて放棄をし、残された相続人一人が単純承認をするという対応もありえます。
③相続限定承認は全員共同が必要
参考までに言えば、限定相続という手続き(遺産の限度で借財を支払うという相続手続)では全員が同意しないと申立てができません。
(弁護士 大澤 龍司)