私の母の姉(叔母)の財産に関するご相談をさせて下さい。
現在母には存命の姉が2人います。その1人の姉(叔母)ですが、高齢の為判断能力が少し劣ってきており現在施設に入っていますが、その預貯金管理を姪がする事になりました。(正式な成人後見人と言う訳ではありません)
母ともう1人の姉も高齢の為、その姪にお願いするという一筆を交わしております。(便箋にその旨書いて印を押した簡単なものです。)
その際、条件として叔母の預貯金がいくらあるのか、また叔母に係る出費が生じた場合は領収書をきちんともらった上、報告するようにという条件を口頭のみで交わしていました。
当初は預金通帳は全部で3冊あると言っていましたが、どこの銀行に口座があるのか、残高も聞いても教えてくれませんでした。
月日が経つにつれ通帳は2冊でお金は入っていないと言いだしました。
ある日母に1冊の通帳の中身を見せてくれたそうですが、それは主に光熱費の引き落としに使用している通帳らしく、最初3冊あったと言っていた通帳は最終的にはこれ1冊しかないと言いだし、話が2転3転の有様です。
叔母は現在92?歳くらいだと思いますが、年金には一切手をつけておらず、母の実兄(叔母からみても実兄。奥様は既に他界。子供はいませんでした。)が亡くなった際、かなりの遺産を相続したと思われます。(うちの母はその相続から外されました。知識が無く、不当不服申し立てのような事も当時は思いつきもしませんでした)
姪は施設にいるその叔母から姪自身がしたためた文面に印をもらっているようです。
その書面と母の謄本を貰って自分が叔母の姪であると証明し叔母の預貯金を引き出している可能性がございます。
こういった場合、母と姉は叔母がいくらの預貯金があるのかを把握する手立ては無いのでしょうか?叔母には子供はいません。旦那も亡くなっていて実際兄弟は母ともう1人の姉(母から見たら姉、叔母からみたら妹)、それともう1人、亡くなった兄(母からみたら兄)の息子が母達の兄弟に戸籍上なっています。
その息子は叔母の隣りに住んでおり、何かあれば気にかけていたようです。
叔母の家には1000万の現金が金庫にあったようですが(叔母がそう話していました)そのお金も叔母が施設に入るので姪が叔母宅(叔母はすでに入院の為、誰もいない状態。合鍵は息子とその母親が持っていた)を訪れた際は金庫にはお金は200万ほどしか無かったと姪の証言。
家族、親戚間のお金ね使い込みはどうする事もできないのでしょうか?
お聞きしたいのは上記2点と今後のアドバイスがあればご教授頂きたいです。
税理士の成人後見人を家裁にお願いしようかとも思いましたが、母は姪と絶縁状態になる事は避けたいと考えています。
長文失礼致しました。
何卒よろしくお願い申し上げます。
【ニックネーム】
新月
【回答の詳細】
本件は、姪による叔母の財産の使い込みが大いに疑われるケースです。
このようなケースでは、叔母が亡くなった後に姪との間で遺産の取り込みをめぐって争いになることは必至です。
このため、まず、叔母の預貯金を把握する方法を解説した後に、どのようにして将来の紛争を防止することができるかを、解説したいと思います。
第1 叔母の預貯金を把握する方法について
基本的に、相談者の母や母の姉が叔母の預貯金の取引履歴や残高を確認する手段はありません。
銀行は、本人以外の者(たとえ家族であっても)からの請求には応じません。
他方で、本人の委任状がある場合には開示に応じることが多いです。
そこで、委任状を取ることについて姪に悟られないように叔母と接触できるかどうかが問題となります。
母や母の姉又は姪以外の親族(実兄の息子等)が叔母と接触が可能であれば、叔母から委任状をもらって、銀行に照会を求めることができるでしょう。
その際、銀行によって必要な書類が異なるため、あらかじめ銀行に問い合わせをする必要があります。
また、問い合わせをするためには、どの銀行のどの支店に口座を有しているかも把握する必要があります。
叔母に届く郵便物や、叔母と接触した機会に叔母から直接聞くなどして、把握される必要があります。
第2 どのようにして将来の紛争を防止するか
1 手をこまねいていると叔母の死後に紛争は避けられない
本件は、姪による叔母の財産の使い込みが大いに疑われるケースです。
今、手をこまねいていると叔母の死後に姪の使い込みをめぐって紛争が起こることは必至です。
そうでなくても、取り込まれた叔母の財産については事後的に調査をするには困難を伴います。
姪とは絶縁したくないという母の思いもあります。
しかし、叔母の死後に親族間で争いになる(泣き寝入りをする)ことを避けるためには、今のうちに、姪との間の対立が生じても、何らかの手立てを打っておいた方がよいと思います。
2 姉から財産管理権を奪う必要があります
姪の使い込みを防止するためには、成年後見人等(認知の程度に応じて、保佐人や補助人の制度があります。)に財産管理を委ねるのが良いです。
姪は反発するでしょうが、姪から合法的に財産管理権限を奪うためには有効な手段です。
ただし、成年後見人等がついたからと言って、相談者らが叔母の財産を把握することができるわけではありません。
成年後見人等は叔母に代わって(又は合意を得て)財産管理を行うにすぎません。
したがって、叔母の財産状態を把握するためには、叔母の承諾を得て金融機関等への照会を行う必要があるでしょう。
3 申し立てには姪の同意は不要です
使い込みをしている場合には、姪は、成年後見人等の申し立てに反発するでしょう。
しかし、制度上、姪の同意は必要ありません。相談者らは姪に告げずに申し立てを行えばよいのです。
その際、姪が、母と母の姉から財産管理を委ねることについて一筆もらっていることは、なんら法的な障害にはなりません。
4 申し立てには周到な準備が必要です。
ただし、拙速な申し立ては禁物です。
申し立てをしようとしていることを姪に察知されると、姪による取り込みや証拠隠滅を助長することになるでしょう。
このため、申し立てに必要な叔母の診断書などは、事前に取得をしておく必要があります。
5 弁護士に相談された方がよいと思います
以上では、姪による叔母の財産の使い込みの疑いが大きいという前提で、解説しました。
しかし、その前提が正しいどうかは、さらに詳しい話を聞かなければいけないように思います。
また、叔母の周辺の親族関係(兄の息子等)を利用すれば、なるべく姪との衝突をさけながら対処する方法も、考えうるかもしれません。
叔母が高齢であり、近い将来に相続が予想されることや、叔母が保有している資産が大きいことなども考慮すれば、早めに、相続に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
(弁護士 岡本英樹)