【題名】
叔父、叔母共有名義の建物
【ご質問内容】
叔母が亡くなり、子供がいなく甥、姪で遺産分割の協議の結果私が土地建物を相続手続き完了しました。
ただ建物が叔父、叔母共有名義で
叔父の相続人については、私が依頼した手続き会社で調査してもらったが連絡もつかない状況で無理との返事でした。土地建物は相続引き受けた時点で処分する事で協議人と合意して私が相続に掛けた売却費用で検討しています…伊勢志摩という地理的にも2、3確認しましたが大手業者では引取りできない地区のようです。まずは叔父名義変更変更が無理の中国庫帰属や売却し、処分したいのですが宜しくお願い致します。
【ニックネーム】
ranmaru1020
【相談の概要】
本件は、簡単に言えば、遺産で取得した土地上の建物の所有者(本件では叔父の相続人)と連絡がつかないため、建物の撤去等を求めることができずに困っているというものです。
【回答】
このような場合にとることができる対応策は以下のとおりです。
1.不在者財産管理人の選任
家庭裁判所に申立てを行い、所在不明の相続人ごとに「不在者財産管理人」を選任してもらう方法です。
選任された管理人が相続人の立場で協議に参加するため、売却に向けて手続きを進めることが可能となります。
ただし、この場合、裁判所に申立時に、予納金として20万~100万円程度の納付を求められます。
又、建物の処分をするには裁判所の許可が必要になります。
2.失踪宣告
もし、建物の所有者の生死が7年以上明らかでない場合には、家庭裁判所に「失踪宣告」をし、その所有者を死亡した扱いにしてもらうことも可能です。
ただ、行方不明というだけでは失踪宣告が出ません。
当事務所に扱った案件では、年齢から言えば、失踪者が90歳を超える高年齢の場合に失踪宣告が認められたことがあります。
又、失踪者が災害等に巻き込まれたことが明らかな場合にも、失踪宣告がなされる可能性が高いです。
それ以外にどのようなケースで7年間生死不明と言えるかは、弁護士に相談されてその意見をお聞きになるのがいいでしょう。
3.新設された制度の活用ができるか?
近年、所有者不明土地が増加していることから、法律で次のような新制度が設けられています。
本件では、建物を撤去して売買できないのなら、土地を売買以外の方法で処分できないかを検討してみましょう。
①相続土地国庫帰属制度
土地を国庫に帰属させる制度ですが、問題のあるような土地を国に帰属させるのは困難です。
例えば境界がはっきりしていない土地を国は取得しませんし、また、土地上に建物がある土地も国は取得しません。
そのため、本件ではこの制度は利用できません。
②所有者不明土地管理命令制度
この制度は、主に、所有者が誰かがわからない場合に使うことを想定されていますが、所有者の所在不明の場合にも使用が可能なように思われます。
ただ、不在者財産管理人制度とどのように役割分担をするのか、現段階では詳しい情報を入手できていません。
なお、この制度は家庭裁判所に申立てをする必要がありますが、その際、不在者財産管理人と同様に予納金を納付する必要があります。
又、不在者財産管理人制度と同様に、建物を処分するためには裁判所の許可が必要になります。
4.まとめ
本件では、まず、不在者財産管理人制度か、所有者不明土地管理命令制度のいずれかを検討されるといいでしょう。
どちらの制度を利用するのがいいかどうか、難しい問題がありますので、この点も弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。
(ただ、弁護士も新制度がどのように運用されているかどうかについての情報を持っていないことが多いことはご了解ください。
なお、そのような場合には、弁護士は事件を受けてから初めて本格的に調査を始めるという場合が多いです。)
(弁護士 山本こずえ)