【質問の要旨】
被相続人:父
相続人:母、長女、次女、長男(相談者)
遺産:家屋、土地600坪ほど
遺言書:なし
相続手続:未完了
その他:生前、姉弟に遺産分割について口頭で説明していた
・母が父の意思を継いで、遺言書を作成して他界した場合
姉弟の相続分割に有効か
【回答の要旨】
1.結論
母が父の意思を継いで、遺言書を作ったとしても有効とはなりません。
2.父の相続について、早く遺産分割すべき
父が生前、言葉で財産の分け方を説明していたとしても、それは遺言にはなりません。
そのため、法律上は父の相続について、遺言書がない状態です。
このような状態で父の意思を活かしたいのであれば、父が生前説明したとおりの内容で、相続人全員が《遺産分割協議書》を作るしかありません。
初めまして、お世話になります。
分からないことがあり、教えてくださると助かります。
父、母、姉1、姉2、私(長男)の5人家族で姉1姉2は結婚して家を出ています。私は結婚して両親と実家で同居です。実家に家屋と600坪程度の土地があります。10年以上前ですが父が他界しました。父は生前に3兄弟に対して土地の相続分割について口頭でのみ説明していましたが、文書はありませんでした。現在もまだ相続の手続きはしていません。この場合、ずっと私が同居している母が将来他界した場合に、仮に母が、生前の父の意思をついで遺言書を作ったら、その遺言書は3兄弟の相続分割に有効になるのでしょうか?
無料相談とのことで、ご回答いただけると助かります。よろしくお願いします。
【ニックネーム】
たけ
【回答】
1.問題点は、父の生前の意思に沿った遺言書を母が作成できるか?
今回のケースでは、10年以上前に亡くなった父は、生前に子ども3人に相続財産の分け方を説明しています。
しかし、遺言書はありません。
このようなケースで、母が、生前の父の意思に沿った内容の遺言書を作成することで、その内容どおりの相続ができるのか、問題になります。
2.父の相続について、遺言書はない
まず、父の相続については、生前に言葉で説明があっただけで、遺言書の作成がされていません。
このように遺言書の内容を口で言っただけという場合、法律上は、遺言書はないということになります。
遺言書がないのであれば、法律で定められた割合で、相続をしていることになります。
3.父の財産は相続人全員の共有状態になっている
今回のケースであれば、父の相続財産は、父の相続人である母が2分の1、3人の子どもらがそれぞれ6分の1ずつ持っていることになります。
このような状態は、《共有》といって、売るときに相続人全員の同意が必要になります。
そうすると、土地や建物を売るときにとても不便なので、一人の人の所有にした方がよいでしょう。
その場合は、<遺産分割協議>という相続人同士の話し合いをすれば、一人の所有にすることができます。
しかし、そのような話し合いをしない限りは、上記相続分の割合で、共有しているということになります。
4.母は、父の財産の2分の1だけ自由にできる
遺言書は、自分が死んでしまった後の財産の行き先を決めるためのものです。
そのため、自分の財産でなければ、遺言書によって誰かに取得させることはできません。
今回のケースでは、母が父の意思をついで、遺言書を作ることができるか問題となっていますが、母が自由にできるのは、母の財産だけです。
ただし、母の財産の中に、父の相続財産も2分の1含まれています。
そのため、母は、父の財産の2分の1だけ誰にあげるか自由に決めることができます。
5.遺産分割協議をした方がよい
土地の共有状態がずっと続くと、相続が発生する度にどんどん共有する人が広がることになります。
そうすると、一人の人の名義にするのがどんどん難しくなります。
今回のケースでは、現在、土地や建物が共有状態のままになっているので、今のうちに誰か一人の所有にした方が良いでしょう。
相談者の父は、10年以上前に亡くなっているので、そんなに昔の相続について、遺産分割できるのか疑問に思うかもしれません。
しかし、遺産分割は、たとえ10年以上前の相続についてもすることができます。
相談者としては、相続人全員を集めて、遺産の分け方を決めて、遺産分割協議書をきちんと作成するのがよいでしょう。
(弁護士 山本こずえ)