【質問概要】
・将来の被相続人:父
・将来の相続人:姉、相談者、相談者の長男(父の養子)
・遺言書:あり(自宅土地は相談者に相続させる)
・自宅土地を相談者ではなく、相談者の長男に相続させたい。
【題名】
遺言書について
【ご質問内容】
初めまして。
父の遺言書について相談です。 母(配偶者死去)はいなく、法定相続人は私、姉、私の子供(長男で養子縁組済)の3人です。
自宅の土地を私に相続させると記載ある公正遺言書があるのですが、私が相続せず、長男に相続させたいと思っています。その場合姉の許可がないとできないのでしょうか? 今の遺言書に「私だけの判断で子供に相続させることができる」等追加した方がいいのでしょうか?
アドバイス頂ければ幸いです。
宜しくお願いいたします。
【ニックネーム】
さぶちゃん
【回答】
1 前提
父の生死が分かりませんが、以下では父はまだ生存していることを前提に回答します。
2 父に自筆証書遺言を書いてもらう方法
遺言書が複数作成されており、内容に矛盾がある場合は、新しい日付のものが優先します。
そのため、既に作成された遺言書の内容を変更したい場合は、別途新しい日付で遺言書を作成することがおすすめです。
今回のケースでは、公正証書遺言が既に作成されているということですので、今の公正証書遺言書のうちの一部についてのみ、手早くするには父の自筆証書遺言書によって修正するという方法をおすすめします。
遺言書は父が自由にその内容を決めることができますので、姉の許可は必要ありません。
父には、自宅の土地を相談者の長男に相続させるという内容の自筆証書遺言を書いてもらうとよいでしょう。
そうすれば、公正証書のうち自宅の土地を相談者に相続させるという部分が撤回され、長男に相続させるという内容が優先されることになります。
なお、費用はかかりますが、公正証書遺言書で作成し直すという方法をとることができれば遺言書の有効性が争われることがない、又、相続した後の手続が簡単になります。
費用が掛かり、手間もかかりますが、確実な遺言書ということであれば、公正証書遺言書が望ましいです。
3 父の死後、遺言書と異なる内容の遺産分割をするには相続人全員の同意が必要
遺言書を書き替えない場合についても述べておきましょう。
遺言書の記載とは異なる内容の遺産分割をすることも可能ですが、相続人全員の同意が必要となります。
そのため、本件事案においても、父の死後、今の遺言書とは異なる内容の遺産分割を希望する場合は、姉の同意が必要になります。
自宅の土地を相談者が取得しようが、相談者の長男が取得しようが、姉にはあまり関係がない話だと思いますので、姉を説得することになるでしょう。
4 相談者から長男に贈与する方法
父に自筆証書遺言書を書いてもらうことができず、父の死後、どうしても姉を説得することが困難な場合は、相談者から長男に自宅の土地を贈与する方法が考えられます。
ただし、この場合、長男は(おそらく多額の)贈与税を支払う必要があることに注意が必要です。
(弁護士 武田和也)