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実例Q&A

生命保険金を含めて遺産分割をしたいが、贈与税は発生するか?【Q&A900】

2024年11月13日

【題名】

相続人の合意で生命保険金を特別受益として扱うことはできるか?

【ご質問内容】

被相続人:母(父は20年ほど前に他界) 遺言書なし

相続人:兄、私、弟の3人

相続財産:銀行預貯金のみ

生命保険:契約者、被保険人および保険料支払者は母、指定受取人は私と弟

(兄が指定受取人になっていないのは、大学入学時より地元を離れて生活してきたため)

相続人3人の間では、相続財産ではない生命保険金を含めて均等に3等分することで合意できています。ただ、銀行預貯金を3等分し、その上で生命保険金を3等分すると、弟から兄と私に贈与することになり、兄に贈与税が発生します。

相続税を回避するために、弟が受け取った生命保険金の一部または全部を相続人3人の合意の上で特別受益と見なし、持戻しを計算上で行うのではなく、現金で返金するというのは可能でしょうか?

持戻しは、通常、現金で返金するのではなく、計算によって行うことは理解しております。

また、ネットでの記事を見ると、生命保険金を特別受益と見なすかどうかは、生命保険金を貰わなかった側が、多額の生命保険金を受け取った側に対して、生命保険金を特別受益として持ち戻すことを求める裁判を起こし、さらに、裁判所が、相続財産と生命保険金のとの比率やその他の事情を勘案して判断がなされるものであると、理解しています。

なお、銀行預貯金総額と生命保険金総額の比率は1:1.3です。また、銀行預貯金を3等分し、その上で生命保険金を3等分すると、兄、私、弟の最終受領額の比率は1:2:3.5になります。

ご回答のほどよろしくお願いいたします。

【ニックネーム】

 KV53tmc37

 

【回答】

1.生命保険金は遺産分割の対象になるか?

まず、原則として、生命保険金は受取人が指定されている場合は、受取人の固有の財産ということになり、遺産分割の対象にはなりません。

ご相談のケースでは、相続財産としては預貯金のみです。

ただ、相談者と相談者の弟が指定受取人となっている生命保険が存在しており、これを遺産分割の対象とすると何らかの問題が生じるのか否かが問題になります。

実務上は、遺産総額に対する保険金の比率が1人につき50~60%であれば、特別受益(遺産)として扱われるとされています。

(参照:最二小決平成16・10・29民集58巻7号1979頁)

2.今回のケースについて

今回のケースでは、遺産総額と保険金総額の比率は1:1.3であり、保険金総額のうち相談者と相談者の弟の受取金額の比率は不明ですが、仮に1:1の平等だとすれば、1人につき遺産総額の65%程度となるため、生命保険金が特別受益(遺産)にあたる可能性があります。

3.生命保険も含めて3等分にすればよい

ただ、本件の場合、次のような分割をすると問題はないと思われます。

預貯金が1億円で保険金が6500万円ずつだとすれば、これを合算して平等に3等分すると、1人につき約7666万円ほどの取得となります。

そのため、次のように分割するといいでしょう。

相談者:保険金6500万円+遺産分割分:1166万円=7666万円

弟:保険金6500万円+遺産分割分:1166万円=7666万円

長男:遺産分割分=7666万円

上記のような配分にすると、保険金については相談者と弟がそのまま受取をした上で、預貯金1億円の分割分だけの調整で問題が解決し、税務的になんらの問題も生じません。

4.贈与税の課税はあるかもしれないケース

遺産の預貯金1億円の財産の移動(前記3項に記載したのがこれに該当します)については、兄弟間でどのような不平等な分け方であっても、あくまで遺産分割の範囲内の問題であり、贈与税の問題は生じません。

しかし、遺産分割といいながら、その対象に遺産ではない保険金(これは相談者や弟が独自に取得しており、本来、遺産とは異なる財産です)も含めば、その保険金の分配は遺産分割とは別個の財産移動だとして贈与税の対象になる可能性があります。

そのため、前記3項以外の対応をされるのなら、税金の専門家である税理士に、是非、相談されることをお勧めします。

(弁護士 山本こずえ)                                                   

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