【題名】
病気の母の預金を姉が使い込んだ
【ご質問内容】
昨年母が病気になりフォローを姉と自分でしていたが、最近預金から引き落としがかなりされている事が判明。
姉とは普段から意思疎通が難しく、特に去年あたりから連絡が取りにくい。
お金の行方を母が知りたい、
そして今後のためにも遺産相続の事を決めておきたい。
ですが、どうしたらいいのか分からず。
このような事で弁護士さんにお願いできるのでしょうか
【ニックネーム】
たかし
【回答】
1.口座からの引落しについて
今回のケースでは、母の口座から引き落としがあることが判明しているものの、その引き落としがかなりされているとのことです。
もっとも、引き落としの場合は、摘要欄の記載により引き落とし先の企業などが記載されており、引き落とし先が判明していることがほとんどです。
そのため、今回のご質問のケースでは、引き落としではなく、カードや通帳による出金など、使途不明の出金がされているという趣旨かと思われます。
さて、そのような場合にどのように調べたらよいのでしょうか。
2.カード出金の調査方法
①ATM出金の場合は、金融機関にどこの機械かを確認する
カード出金だとすると、どこのATMで出金されているか、通帳記載の機械の番号から出金場所を特定できます。
例えば、姉の自宅付近のATMから出金されており、姉の自宅と母の住んでいる場所が離れているのであれば、母自身が出金したとは考えられず、姉が出金したことの証拠になる可能性があります。
②窓口の払い戻しの場合は出金伝票(払戻請求書)を取り寄せして、筆跡を確認する
窓口で払い戻しをしている場合は、窓口に来た人が払戻請求書に署名・押印をしていると思われます。
口座のある金融機関に上記出金伝票の取り寄せを依頼し、筆跡を確認し、姉の筆跡かどうか確認することで、払い戻しをした人が姉であるか確認することが考えられます。
また、姉が代理人として出金をしていないかも確認した方がよいでしょう。
3.姉への請求について
上記のような方法で姉が出金をしたという証拠が集まったのであれば、姉に事実確認を求め、出金をした金銭の使途について説明ができないのであれば、最終的には訴訟を提起することも考えられます。
ただ、注意すべきなのは、母が預貯金の名義人ということです。
そのため、姉に請求することができるのは母だけであり、訴訟なども母が弁護士に依頼をして提訴することになります。
4.今後の相続のことについて決めるには?
現段階では、相談者の母は存命ですので、今後の相続について決めるとすれば、母が遺言書を作成し、どのように遺産を分けるか決めることになります。
遺言書の種類としては、①自筆証書遺言②公正証書遺言の2種類があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
①自筆証書遺言について
自筆証書遺言は、遺言者自身が全文を自筆し、日付を記載し、署名押印することが必要です。
遺言者が自分一人で作成することができるので、簡単に作成することができますが、一定の様式が決まっており、様式が守られていない場合は有効性が争われる危険もあります。
②公正証書遺言について
公正証書遺言とは、公証役場(日本全国にあります)というところで、公証人に作成してもらう方式の遺言です。
作成のためには費用や手間がかかりますが、公証人(元検察官や元裁判官の方が多い)が作成するので、公正証書遺言で作成すると、有効性が争われにくいというメリットがあります。
(参考:日本公証人連合会HP https://www.koshonin.gr.jp)
5.弁護士への相談・依頼について
金融機関への照会による調査や遺言書の作成については、弁護士に相談・依頼することもできます。
依頼するかどうかは別として、その内容や方法について相談するということも可能です。
(弁護士 山本こずえ)