【質問の要旨】
・共有持ち分を有する会員が死去し、相続することになった
・年会費・固定資産税の支払いを回避したいが、転売にも費用が発生する
・会員権の放棄または処分の方法はあるか?
【回答の要旨】
・被相続人がリゾート会員権の他に多くの遺産を持っている場合は相続放棄は難しい。
・会員権業者に売る場合は多額の処分費用がかかる。
・共有持分放棄しても、実際上、登記ができない。
・リゾートホテルの会員規約や入会契約書、管理規則などで、
どのような場合に会費支払い義務が免除されるのかを法律的に検討する必要がある。
【ご質問内容】
今年7月、メルヴェール有馬の共有持分を有する会員であった死去に伴い、同会員権を相続せざるを得ない状況となっております。
施設利用機会もないため、年会費・固定資産税の支払いを回避したいのですが、転売にも多額の費用が発生すると聞いております。
会員権の放棄または処分の方法はないものなのでしょうか。
(kotani)
【大澤はメルヴェール有馬の管財人でした】
平成21年、メルヴェール有馬やメルヴェール箱根などのリゾートホテルを運営していた中央興産株式会社が破産し、弁護士大澤が裁判所から破産管財人に選任されました。
中央興産の他に、中央リゾート㈱等の関連会社を含め計6社の管財人であり、総債務は82億円でした。
(⇒管財人としての解決方法)
【ホテルを利用しなくても、毎年、会費や固定資産税を支払いが必要なので、リゾート会員権を放棄したいが・・・】
バブル時代にリゾート会員権を購入することが流行したことがあります。
ただ、ホテルを利用しなくとも毎年会費を支払う必要があります。
又、土地やホテル建物の共有持分を持っていることから固定資産税の支払いも必要になります。
そのため、利用しなくても会費や税がかかるので、会員権をなんとか放棄できないかという質問です。
【相続放棄をすると・・】
被相続人の方に遺産がなく、会員権だけなら相続放棄をされるといいでしょう。
しかし、他に多くの財産があるのなら、相続放棄はできません。
なんとか、マイナスの財産(これも「負」動産です!)である会員権だけもなんとかできないかという悩ましい問題です。
共有持分放棄なども考えられますが、果たして実現可能性があるかどうかを検討し、併せて他の方法がないかどうかも検討します。
【 業者に売る場合は、多額の処分費用がかかる】
ゴルフ会員権は業者の売ることは可能です。
この会員権であれば買いたいという人がたくさんいるからです。
しかし、リゾートホテルの会員権については、買いたいという人はほとんどおらず、そのため、会員権には値段がつきません。
会員権業者も買い取りをしないというのが実情です。
(⇒リゾートホテルがなぜ人気がなくなったかについては、※ブログを参照ください)。
どうしても引き取って欲しいと言えば、20万円近くのお金を請求されたという話を聞いたことがあります。
【運営会社に無償でもいいから譲渡する方法も考えられるが】
リゾートホテルを運営する会社に買い取ってもらう方法も考えられます。
しかし、運営会社とすれば、会員の皆様は、毎年会費を払っていただく収入源です。
又、施設の経費である固定資産税を支払ってくれる経費負担者でもあります。
加えて、ホテル施設を利用してくれるかもしれない潜在的利用者です。
そのため、経営面から考えても、会員権を買い取ることによる不利益をあえて運営会社が選択することは考えにくいです。
ホテル会員権が飛ぶように売れた時代なら、一旦、運営会社が譲り受けて新たに販売をすると言う選択肢がありましたが、現状ではそれも無理という結論になりそうです。
【共有持分放棄しても、実際上、登記ができない】
リゾート会員権は、簡単に言えば、ホテル施設などの不動産とホテルの管理運営契約が合体したものです。
そのうち、不動産については、多くの場合、ホテル運営会社と多数の会員の共有の形になっています。
そのため、共有持分を放棄することも考えられます。
しかし、放棄したことを明らかにするためには登記が必要です。
登記がないと、税を徴収する自治体に放棄を主張できず、固定資産税を払い続けるしかありません。
しかし、いざ登記をするためには、他の会員に登記のための委任状をいただく必要がありますし、それをくれない人には訴訟を提起する必要があります。
何十人、あるいは何百人を超すかもしれない他の会員にこのような手続きをするのは費用や手間の面から見て、実際上、不可能でしょう。
【会費の支払はどうする】
なお、仮に、持分放棄の登記ができたとしても、会費の支払いが残れば、何ら問題は解決しません。
固定死産税より会費の支払額がはるかに高額だからです。
会費支払い義務をなくすための方法はリゾート会社の仕組みにより異なります。
リゾートホテルの会員規約や入会契約書、管理規則などで、どういう場合に会費支払い義務が免除されるのかを法律的に検討する必要があります。
昨年、当事務所で扱って解決したケースでは持ち分と会員資格との連携を断ち切るという作戦が功を奏しました(⇒HP参照)が、全てこの方法で解決するわけではありません。
どこに相手方リゾートホテル側の弱点があるのか、ち密な検討をしてくれる弁護士に相談されることをお勧めします。
(弁護士 大澤龍司)