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相続法改正8 自筆証書遺言の保管制度

2019年8月29日

【遺言を法務局が預かる制度が新設】

先日のブログでは、手書きで作成する自筆証書遺言(以下、「自筆遺言」と略称します)の一部がパソコンで作成できるようになり、財産が多い方でも手軽に作成できるようになった新法改正をご紹介しました。

今回はこれに加え、自筆遺言を法務局が預かってくれる、という新制度をご紹介します。

この制度のメリットは大きく2つ

①自宅で保管する必要がないため、家族に見つかる心配が無い
②検認手続が不要になるため、紛争になる前に遺産を相続できる

この2つのメリットについて、以下ご紹介していきます。

【メリット① 家族に見つからずに作成できる】

自筆遺言の問題点として、手書きで作成すると通常は自宅で保管するため、災害や引っ越しなどの際に紛失する、あるいは遺言を見つけた親族の方により破棄・改ざん、あるいは隠されるなどの問題があるといわれていました。

また、ご家族が破棄や改ざんしないとしても、「長男に全遺産を相続させる」という遺言を見つけた二男としては心穏やかではないでしょうし、ご家族の間でもめ事が起きてしまうという心配もありました。

そのため、家族に秘密で遺言を作りたい方は、(費用はかかりますが)公証役場に出向いて、公正証書遺言を作成する傾向が多かったのです。

しかし、今回は手書きで作成した自筆遺言も一定の様式を整えて法務局に届け出ることで、法務局が遺言を保管してくれます。

そのため、紛失の心配やご家族に見つかって破棄される、あるいはもめ事が発生することを防ぐことができます。
これが1つのメリットです。

【相続人には通知が届いて把握できる】

もっとも、遺言者が死亡した後、相続人の一人(たとえば財産をもらえる人)が法務局に遺言の写しを閲覧・交付申請した場合、他の相続人にも通知が届く制度になっていますので、遺言が存在することは相続人全員が把握できる制度になっています。

このような制度で、遺言の紛失や隠匿、不当な改ざんが行われることを防止しよう、というのが今回の法改正です。

【メリット② 検認手続が不要になる】

もう一つ、自筆遺言の問題点として、家庭裁判所の検認手続が必要、ということが指摘されていました。

検認手続とは、家庭裁判所に自筆遺言を提出して、相続人全員を家庭裁判所に呼び集め、自筆遺言の内容を相続人に知らせると共に、遺言内容を確認する手続です。

自宅の名義変更を行う法務局や、預金の解約手続を行う銀行などは、いくら自筆遺言を持ち込んでも、検認を受けた遺言でなければ相続手続には応じないため、自筆遺言は必ずこの検認手続を経る必要があります。

ところが、この検認手続では家庭裁判所に出頭し、さらに相続人全員を呼び集める手続のため非常に煩雑でした。

そこで、今回の改正では自筆遺言を法務局に届け出て保管してもらうことで、検認手続を不要とする、という制度に変わりました。

この改正で、自筆遺言も検認手続を経なくとも遺言を執行して自宅不動産や預金の相続手続を行うことが可能となったのです。

【新制度は令和2年7月10日から施行】

この自筆遺言の保管に関する改正は、令和2年(2020年)7月10日から施行される予定です。

そのため、現時点(令和元年8月)時点で遺言を作成される方は、従前通りの方法で自筆遺言を作っておき、暫定的に貸金庫や信頼ある専門家に依頼して保管するなどの対策を取る必要があります。

その上で、2020年に法改正が施行されたところで改めてこの遺言保管制度の利用を考える必要があるでしょう。

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