【質問概要】
・被相続人:母方の祖母(8年前死亡)
・相続人:叔母、父(祖母と養子縁組)、相談者(代襲相続)、弟(代襲相続)
・遺産:実家(登記は祖父と祖母の共有)
・遺言書:なし
・相続開始後も、父らが実家にしばらく居住し続けていた。
・叔母から、実家の販売価格の1/3(約170万円)を渡せと請求された。
・父が叔母に過去の固定資産税を請求すると、逆に賃料を払えと言われた。
【題名】
数年越しの遺産協議と実家について
【ご質問内容】
相続関係の質問です。
8年前に祖母がなくなり、その後は実父と私、継母で住んでいました。(私が生まれる前から実父は住んでおり、祖母は亡くなった母方の祖母だから実母が亡くなったタイミングで養子縁組済み。継母は祖母が亡くなってから住んでいます。私には弟がいますが6年ほど前に家を出ています)
4年ほど前に私は実家を出てその後は実父と継母が住んでいました。
1年ほど前に急に叔母に遺産分けをしたいと言われ実家相続の話がでました。
それまで相続に関しては何もしておらず祖父母の所有になっていたようです。
叔母の言い分では住んでいるのだから販売価格の1/3を渡せとの事でした。(およそ170万程の請求)
そんなこともあり精神的に疲れ実父は家を出ざるを得なくなり今はマンションに引っ越しました。
最終的には家を解体し売るしかないとの事で家のことは落ち着きそうですが、
今まで継続して住んではいたものの相続はしていなかったので、過去の固定資産税を叔母に請求したい、また出たあとの固定資産税は分割したいと実父が伝えたところ、それなら賃料を払えと言われました。
どちらの言い分も通るのでしょうか。
また、出てかざるを得ない状況をつくられたのですが、これに対しては何か請求することは可能なのでしょうか。
叔母の急な話に巻き込まれ、妊娠中だった私も精神的に疲れ緊急で病院に行くなどこのままだと腑に落ちない部分も多そうです。
どうかお力添えいただければと思います。
【ニックネーム】
ちゃん
【回答】
1、実家の遺産分割
現在、実家には誰も住んでおらず、実家を取得したい相続人がいないのであれば、第三者に売却するとよいでしょう。
この場合には、持分を有している者が、諸経費を控除した売却代金につき、持分割合に応じた金銭を取得することになります。
2、父は叔母に賃料を支払う必要はない
実家には、祖母の生前、祖母と一緒に実父らが無償で住んでおり、祖母死亡後も遺産分割が完了しない状態で実父らが住み続けていたが、現在では退去したとのことです。
被相続人の生前中に、無償で被相続人と同居していた相続人は、遺産分割までは引き続き無償で建物に居住できるとされています(最高裁判例平成8年12月17日)。
したがって、父は叔母に過去の賃料を支払う必要はありません。
3、父は叔母に居住中の固定資産税を請求できないが、退去後は請求できる
無償で借りている以上、固定資産税くらいは負担する必要があるでしょう。
したがって、父は叔母に、父が居住中に支払った固定資産税の一部を請求することはできません。
しかし、退去後は、固定資産税×持分割合に応じた金銭を叔母に請求することができます。
4、退去したことに関して父が叔母に金銭請求することは困難
叔母から実家の販売価格の1/3(約170万円)を請求されて、父はびっくりして退去したのかもしれません。
しかし、遺産分割をして、もし父が実家を単独で取得するのであれば、実家×叔母の持分割合で計算した金銭を支払うよう、叔母は父に請求できます。
その前提であれば、叔母は法的に根拠のない請求をしたわけではありません。
次に、退去の損害賠償ですが、それを判断したのは父であり、そのことだけを理由にして、父が叔母に損害賠償として金銭を請求するのは難しいです。
妊娠中の相談者が精神的に疲れたことについては、お気の毒に思いますが、単なる相続問題に伴うトラブルで心労があっただけでは損害賠償を請求することは難しいでしょう。
(弁護士 武田和也)