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実例Q&A

遺産の帰属が確定する前の固定資産税は誰が負担するべきか【Q&A803】

2023年2月8日

【質問の要旨】

被相続人:母

相続人:子供3名(相談者は末子)

相続財産:母名義の不動産

その他:・母の遺言で財産の全てを自分にと残されたが、他2名より留分減殺請求を受け協議中

    ・相続発生から既に3年以上経過

    ・この相続協議が決着した場合に他2名は遺留分として不動産の一部を相続する予定

→協議決着までに支払った固定資産税は誰が負担すべきか?

 最終的に遺留分として相続した割合で遡って他2名に請求は可能か?

 

【回答】          

遺産の帰属が確定する前の固定資産税を誰が負担するかについて、現在のところ明確な基準は存在しません。

しかし、遺産が確定する前の賃料債権は各相続人がその相続分に応じて取得できると判断した最高裁判決があります。

この判例を参考にすれば、法定相続分より更に少ない遺留分の割合で他の相続人に負担を求めることは、他の相続人の納得を得やすくかつ妥当な負担の方法だと考えられます。
したがって、最終的な遺留分として相続した割合で遡って他の相続人に負担を求めてもよいでしょう。

 

 お世話になります。

 相続財産は亡母名義の不動産のみ、相続人はその子である3名です。

 遺言により全てを末子(当方)にと残されましたが、他2名より遺留分減殺請求を受け協議中です。

 ※相続発生から既に3年以上経過(相続対象の実家は相続発生時から現在まで空家です)

 支払っている固定資産税ですが、この相続協議が決着した場合に他2名は遺留分として不動産の一部を相続します。

 この場合、協議決着までに支払った固定資産税は誰が負担すべきものですか?

 最終的に遺留分として相続した割合で遡って他2名に請求は可能ですか?

 協議中、決着までの税負担が全て当方だとすれば何か釈然としません。

 請求できる権利など基づくものが有ればお教え下さい。

【ニックネーム】

 ソウゾクタイヘン

 

【回答の詳細】

 1 遺産の帰属が確定する前の固定資産税は誰が負担すべきか

 被相続人が死亡後も遺産である不動産について、毎年固定資産税が課税されます。

 遺産の帰属が確定した後には、通常、その不動産を取得する相続人が固定資産税を支払うことになります。

 これに対して、遺産の帰属が確定する前の固定資産税は一体誰が負担するものでしょうか。

 この問いに対し、現在のところ法的に明確な基準は存在しません。

 したがって、遺産分割協議においては、各相続人が納得できる妥当な負担の仕方を模索する必要があります。

 

 2 最終的な遺産の帰属の割合で各相続人が負担を求めてもよい

 この点、遺産の帰属が確定する前の賃料債権については、各相続人が法定相続分に従い取得すると判断した最高裁判例(平成17年9月8 日第一小法廷判決)があります。

 賃料と固定資産税は性質が異なるので、相談者のケースに直ちに妥当するとは言えませんが、この判例は参考になります。
 これによると、法定相続分より更に少ない遺留分の割合で各相続人に負担を求めることは、各相続人が納得しやすく、かつ妥当な負担の方法といえるでしょう。
 したがって、相談者から、最終的な遺留分として相続した割合で遡って各相続人に負担を求めてもよいでしょう。

(弁護士 岡本秀樹)

 

 

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