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■タイトル
遺産確認請求事件(固有必要的共同訴訟)の被告人にされた
■ご質問内容
現時点で私は、原告の訴状に同意しているので、答弁書「訴状の趣旨」に対する答弁で「原告の請求を認める」と記載すると
私に不都合なことが予測されるのか?
私は被告側にいるが、事実上の被告人ではないので本人訴訟を考えている。
■ニックネーム
たそ
【回答】
1.遺産確認請求訴訟とは?
ある財産が遺産かどうかについて相続人間で争いがある場合、遺産分割はできません。
そのような場合にその財産が遺産であるということを裁判所に決めてもらう訴訟が遺産確認請求訴訟です。
2.固有必要的訴訟とは?
相続人が3名以上いる場合に、複数の訴訟を起こすと、ある裁判ではその財産が遺産とされ、違う裁判では遺産ではないとされると、遺産かどうかがわからず、遺産分割ができません。
そのため、遺産であるかどうかの訴訟では相続人全員の間で一つの裁判にして、判決で決定された結論を相続人間で同じにする必要があります。
このように一つの裁判に全相続人を参加させ、決定されたことが全員で共通していなければならない訴訟を(難しい言葉ですが)固有必要的共同訴訟といいます。
3.今回のご質問の概要
今回のケースでは、相談者は相続人の一人であるため、遺産確認請求訴訟の被告となっているようです。
ただし、相談者としては、原告の主張する被相続人の遺産について、特に争いがありません。
そのため、訴状に記載されている「請求の趣旨」(仮に、請求が認められる場合は、訴状の請求の趣旨のとおり、判決の主文に記載される)を認めても不都合はないのではないか、というのが今回のご質問です。
4.遺産確認請求訴訟の請求の趣旨の例
遺産確認請求訴訟においては、一般的には「原告と被告らとの間において、別紙物件目録記載の不動産が、被相続人◯◯(◯年◯月◯日死亡)の遺産であることを確認する」等と請求の趣旨に記載されています。
仮に、請求の趣旨がこのような内容のものである場合、原告の請求がそのまま認められると、「被相続人の相続開始時に別紙物件目録記載の不動産が被相続人の所有であり、現在も遺産分割がされずに残っている」ということについて、被告としては将来的に争うことができなくなります。
5.認めても不都合はないか?
相談者としては、おそらく原告が遺産だと主張している財産について、遺産であることに争いはなく、現在も遺産分割されずに残っているということについて争いがないのでしょう。
ただ、上記のとおり、原告の請求を認めて判決が出てしまうと、今後はその財産が遺産に含まれることについて争うことができなくなります。
今回のケースでは、原告がどのような経緯で訴訟提起に至ったのかはわかりません。
原告の主張に現時点で争いがないからといって、安易に認めてしまうと思わぬところで不利益を被るかもしれません。
そのため、相談者としては、一度、弁護士などの専門家のところへ行き、認めても問題がないか慎重に検討した方がよいでしょう。
(弁護士 山本こずえ)



