【質問概要】
・被相続人:父
・遺産:父名義の家
・遺言書:なし
・相続人に関する基礎事情
・両親が数年前に死亡
・父と母の子は相談者のみ
・父と前妻Aの子はBのみ
・父死亡後にBが死亡(Bには配偶者、子なし)
・前妻Aの生死不明
・前妻Aと前夫との子はCのみ
・相続人は誰か
・家の分割割合はどうなるか
・戸籍の取り寄せは司法書士に依頼しないといけないか
【題名】
実家の相続について
【ご質問内容】
はじめまして。
両親が数年前に亡くなり、放っておいた父名義の実家を一人娘の私の名義に相続登記したいと思います。
父には前妻Aに子供Bが一人いて、戸籍謄本を取寄せたら父の死後に亡くなっています。妻や子供はいませんでした。
そのため私だけが相続人となると思い書類を揃え法務局へ手続きしに行きました。
するとBは父の死後に亡くなっているので一度相続権がBに移り、その母(前妻A)が存命ならそちらにも権利がある。前妻Aが亡くなっているなら前妻Aの前夫の子供Cがいるのですかそちらにも権利があるとの事です。
前妻は父と離婚していますし、Cは父とは血縁はありませんので理解できません。
Aが存命の場合、または亡くなっていた場合はCと私との分割する割合はどうなりますか。
AまたはCに権利が発生する場合は戸籍謄本などの取寄せなど、手続きは司法書士さんにお願いしないといけなくなりますか。
【ニックネーム】
おチャボ
【回答】
1 相続人の決まり方
相続人は、分かりやすく説明すると、次のように決まります。
被相続人に配偶者がいる場合は、常に相続人になります。
被相続人に子(又は孫)がいる場合、子も相続人になります(第1順位)。
被相続人に子(又は孫)がいない場合には、親(又は祖父母)が相続人になります(第2順位)。
被相続人に子(又は孫)も親(又は祖父母)もない場合には、兄弟姉妹(又は兄弟姉妹の子)が相続人になります(第3順位)。
2 母→父→Bの順に死亡した場合
1)父の死亡した時点での相続関係
父と母の死亡時期の前後関係が分かりませんので、母、父、(前妻と父の子)Bの順に死亡した場合を考えてみます。
父が死亡したとき、既に母は死亡しており、父の子として、相談者と(前妻と父の子)Bがいます。
父は前妻Aと離婚していますが、両親が離婚しても、(前妻と父の子)Bが父の子でなくなるわけではありません。
結局、この段階では、父の相続人は相談者と(前妻と父の子)Bが相続分をそれぞれの1/2ずつを有していることになります。
2)Bが死亡した後の相続関係
① 前妻Aが存命の場合
父の死亡後に(前妻と父の子)Bが死亡しました。
このBには、配偶者も相続第一順位の子もないので、父母が第二順位の相続人になります。
ただ、このうちの父は既に死亡していますので、存命しているBの母である前妻AがBの遺産を単独で相続します。
結局、父名義の家は相談者と前妻Aが相続分をそれぞれの1/2ずつを有し、不動産もその割合で共有していることになります。
② 前妻Aが死亡している場合
(前妻と父の子)B死亡後に前妻Aも死亡していた場合、前妻Aには配偶者はいませんが、子として(前妻と前夫との子)であるCがいます。
そのため、このCが前妻Aを単独で相続しますので、相談者とCが不動産の持分を1/2ずつ有しているということになります。
3 父→母→Bの順に死亡した場合
1)父の遺産相続
次に、父、母、(前妻と父の子)Bの順に死亡した場合を考えてみます。
父が死亡したとき、母は存命であり、父の子として、相談者とこのBもいます。
したがって、父の遺産相続では、母(法定相続分1/2)と相談者(法定相続分1/4)と(前妻と父の子)B(法定相続分1/4)ということになります。
2)(前妻と父の子)Bの遺産相続
①前妻AとBの遺産相続
父の死後に、母が死亡した場合、相談者が母を単独で相続しますので、その共有持分1/2が相談者の相続分です。
又、(前妻と父の子)Bが死亡したときは、このBの遺産は前妻Aが単独相続します。
したがって、父名義の家は、相談者が持分3/4、前妻Aが持分1/4を有しているということになります。
②前妻Aが死亡している場合の相続人と不動産の持分割合
(前妻と父の子)B死亡後に前妻Aも死亡していた場合、(前妻と前夫の子)Cが前妻Aを単独で相続します。
この場合、父名義の家は、相談者が持分3/4、Cが持分1/4を有しているということになります。
4 死亡した順により、持分割合が変わるので慎重な検討が必要です。
このように非常に複雑なケースですので、死亡の順序によっては、法務局のいうように、父と血縁のない(前妻と前夫の子)Cが不動産の持分を有するような結論になる可能性もあります。
どの順番で関係者が死亡したのかを整理し、上記場合分けに応じて考えていくとよいでしょう。
ただ、それでも理解しにくい、納得できない場合には、お近くの弁護士に相談されるといいでしょう。
5 必要な戸籍謄本の取り寄せ
父名義の不動産について、相続登記をするには、前妻Aや(前妻と前夫の子である)Cの戸籍謄本も必要になります。
戸籍の取り寄せを司法書士に依頼しないといけないということはありません。
ご自身で入手することも可能ですので、市役所の方に相談してみられるとよいでしょう。
(弁護士 武田和也)