【題名】
故人の農協預金の取引履歴の開示請求
【ご質問内容】
父が12年前、母が3年前に亡くなりました。預貯金は全て兄が管理していました。
既に解約もされています。
農協に取引履歴の開示請求をしたのですが客が全くいないのに40分も待たされてから断られました。その理由は、解約が終わった案件だから出せないとのことでした。
又、相続人が全員で窓口にくれば出せるとも言い(2人兄弟です)解約は兄一人で出来たのに開示請求は兄と揃って窓口に来いとはおかしな話です。
そもそも父母のお金について明らかにしない兄が窓口に私と一緒にとは考えられません。農協とはそんなところなのでしょうか。納得できずにいます。
相続について兄と話し合ったことは一度もありません。
全て兄が相続するとの書類に押印するように迫られています。
せめて預貯金の取引履歴を知りたいと考えていますのでご相談した次第です。
【ニックネーム】
夏虎
【回答】
1.取引履歴の開示については、相続人が単独で請求できる
亡くなった人の預貯金の取引経過の開示請求については、最高裁の判例(平成21年1月22日判決)があります。
この判例は、亡くなった人が金融機関と締結していた預金契約上の地位は相続人に引き継がれているため、相続人は単独で開示を求めることができるというものです。
今回のケースで、農協は「相続人全員の同意」を求めております。
しかし、そのような同意は必要なく、相談者が単独で取引履歴の開示をすることができます。
当事務所で農協に履歴の照会をすることはありますが、他の相続人の同意が必要と言われたことはなく、全て回答を得ています。
2.今回のケースでも取引履歴は開示請求できる
ただ、今回は既に解約されたケースのようですので、念のために大阪府内のある農協に確認しましたところ、次の回答がありました。
《上記最高裁の判例は知っている。解約されたからと言って、それを理由に全員の同意が必要ということはない。》
ということなので、がんばって交渉されるといいでしょう。
相談者自身で交渉することが難しければ、弁護士に依頼をするということも選択肢として考えられます。
なお、参考までに取引履歴以外の出金伝票(払い戻し伝票)などの開示については、相続人全員の同意が必要だと言って農協が開示を断ってきたケースはあります。
3.父の取引履歴については取得が難しい
取引履歴は照会時点から10年ほど遡って回答されることが通常です。
今回のケースでは、父については10年以上前に死亡しているため、開示請求が難しいと考えられます。
(弁護士 山本こずえ)