【質問の要旨】
被相続人:母
相続人:相談者、弟A(認知症)、弟B、姉
亡母の預金から、生前、預貯金が全額抜き取られている。
姉や弟Bが関与していると思われる。
母の死亡後7年、母の預貯金口座の取引履歴を開示請求しているが、金融機関は1年分しか開示をせず、
残りの取引履歴については、プライバシーを理由に開示をしない。
預貯金の開示はどのようにしたらよいか?
【題名】
生前贈与と認知症
【ご質問内容】
生前に母の預金全額抜き取られ、兄弟が関与していると思われるが、金融機関はプライバシーがあるといい、開示の条件に裁判することという理不尽な回答である。しかも精神疾患の弟の金の横流しもしている。死後7年経過後のことで、時間がなく、今、弁護士依頼し、期限の延長をしなければならないところである。しかし、その事務所は依頼した一人だけしかやらない。精神疾患の弟Aと、関与したであろうもう一人の弟Bについては調査も遺産分割もやらないということである。相続人の4分の1をやるだけとのことである。認知症のAは置き去りになる。補助は生活保護にしてやるといい、Aは生活保護にはなりたくないと抜き取られた金融機関に開示請求している。補助の対応には苦慮している。
認知もあり兄弟に翻弄されているが、理解している。どのようにAの預金開示を進めるか?相続とは全員で進めるものと思っていました。まずは期限の延長を依頼しましたが全員でやれるようには受けた事務所の考えでしょうか?
補足
抜き取った 姉に対して、返還を求めて、手続き中です。
読ませていただいた答えが金融機関を訴訟するということが書いてありました。弁護士により金融機関を訴訟は難しいと考えていられるところです。どちらが早く、解決に結びつくか?金融機関の問題点は金融庁にも報告しました。手渡し、記録、精神の弟の横流し。かなりの弁護士事務所を回り2年経過しました。期限切れになりそうで、延長のための手続きをしていただいています。
資料はそろっていますが、金融機関対応はむつかしいしごとでしょうか?
【ニックネーム】
むうちゃん
【回答】
1.他人の預貯金口座の開示について
ある人の預貯金口座の有無及び内容は、その人の財産という重要なプライバシーにかかわる事項であり、金融機関が他の人に公開することはありません。
両親や兄弟であっても、他人です。
もし、両親や兄弟の預貯金口座の内容について確認したいのなら、その人らの同意を得るしかありません。
2.相続人であれば、遺産の預貯金を調査できる
しかし、死亡して相続が発生した後は、相続人は遺産を受取る立場であり、預貯金の内容を確認することができます。
入出金履歴などは、請求時点から遡って10年間の期間の取り寄せが可能です。
質問では、被相続人(亡母)の口座の取引履歴が1年分しか開示されないとありますが、当事務所ではそのようなことを言われたことがありません。
なぜ、1年分しか開示しないのか、その金融機関に説明を求めるといいでしょう。
3.使途不明な出金の調査
被相続人(亡母)の口座の中に使途不明金と思われる分があれば、それを誰が使ったのかの調査については次のような方法があります。
- 現金で出金されている場合には、金融機関に保存されている払戻請求書を確認し、その署名が誰の筆跡かを確認するといいでしょう。
- 送金で出金されている場合には、送金先を金融機関に確認すれば、誰が取得したのかがわかります。
- カード出金の場合にはどこで出金されたかで、誰が出金したのかがわかる場合があります。
4.警察は動かないことが多い
もし、母の預貯金を、他人が勝手に引き出していた場合、刑法上の罪としては、詐欺罪や窃盗罪、あるいは横領罪などが考えられます。
しかし、相続人が引き出していたという場合、親族間の特例により刑が免除されますので、警察は動いてくれないと考えていいでしょう。
(弁護士 山本こずえ)